第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午後41~45】

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41 成人の後腸骨稜からの骨髄穿刺で正しいのはどれか。

1.仰臥位で行う。
2.穿刺時は深呼吸を促す。
3.骨髄液吸引時に痛みが生じる。
4.終了後、当日の入浴は可能である。

解答3

解説

骨髄穿刺とは?

骨髄穿刺とは、骨髄液を採取して塗抹標本を作製する検査で、原因不明の貧血、血小板減少、汎血球減少の原因検索などに用いられる。穿刺部位は、成人の場合:(上)後腸骨棘、胸骨(後腸骨稜が使えない時のみ)、小児の場合:(上)後腸骨棘、脊椎骨棘突起、脛骨などである。

1.× 「仰臥位」ではなく腹臥位で行う。
2.× 穿刺時は、深呼吸を促す必要はない。ただし、血小板減少や凝固異常のある場合は、輸血や圧迫止血など十分な対処を行い、出血合併症がないか観察する必要がある。適宜、声掛けや不安を取り除くような支援が必要である。
3.〇 正しい。骨髄液吸引時に痛みが生じる。なぜなら、骨髄に針が届いて吸引するときの痛みは局所麻酔では抑えられないため。
4.× 終了後当日の入浴は、「可能」ではなく不可能である。なぜなら、検査当日は出血や感染症の発症が懸念されるため。翌日からは、防水テープを剥がし、出血していなければシャワー浴・入浴も可能である。

 

 

 

 

 

42 Aさん(55歳、男性、会社員)は胃癌の終末期である。
 Aさんの訴えのうちスピリチュアルペインの表出はどれか。

1.「腹痛がずっと続いています」
2.「吐き気が続くと思うと不安です」
3.「今後の生活にかかるお金が心配です」
4.「これまでの自分の人生が意味のないものに思えます」

解答4

解説

スピリチュアルペインとは?

トータルペイン(全人的苦痛)は、身体的・精神的・社会的・霊的(スピリチュアル)の4つの苦痛をいう。スピリチュアルペインとは、死を目前にした癌患者などが、患者自身の人生の否定・価値観の否定・存在自身の否定を受けたと感じることに起因する。抑うつ、不安、 怒り、いらだち、悲観などをいう。

1.× 「腹痛がずっと続いています」という発言は、身体的ペインの表出である。身体的苦痛とは、痛みや倦怠感・呼吸困難感などの症状や日常生活動作の支障が挙げられる。
2.× 「吐き気が続くと思うと不安です」という発言は、精神的ペインの表出である。社会的苦痛とは、家庭の問題や経済的問題・人間関係、仕事上の問題などが挙げられる。
3.× 「今後の生活にかかるお金が心配です」という発言は、社会的ペインの表出である。精神的苦痛とは、不安やいらだち・うつ状態・孤独感などが挙げられる。
4.〇 正しい。「これまでの自分の人生が意味のないものに思えます」という発言は、スピリチュアルペインの表出である。スピリチュアルペインとは、死を目前にした癌患者などが、患者自身の人生の否定・価値観の否定・存在自身の否定を受けたと感じることに起因する。抑うつ、不安、 怒り、いらだち、悲観などをいう。

 

 

 

 

43 Aさん(63歳、男性)は3年前から肺気腫で定期受診を続けていた。最近、歩行時の息切れが強くなってきたことを自覚し、心配になったため受診した。受診時、呼吸数は34/分で、口唇のチアノーゼがみられた。
 Aさんについて正しいのはどれか。

1.1回換気量が増加している。
2.呼気よりも吸気を促すと効果的である。
3.経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>は上昇している。
4.病状が進行すると動脈血二酸化炭素分圧<PaCO2>が上昇する。

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(63歳、男性、肺気腫
・最近:歩行時の息切れが強くなってきた。
・受診時:呼吸数34/分(頻呼吸:24/分以上)、口唇のチアノーゼあり。
→肺気腫とは、終末細気管支より末梢の気腔が、肺胞壁の破壊を伴いながら異常に拡大し、明らかな線維化は認められない病変を指す。在宅酸素療法の適応は、高度慢性呼吸不全(動脈血酸素分圧が60Torr以下の者で、睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症を生ずる場合である。

1.× 1回換気量は、「増加」ではなく減少している。なぜなら、Aさんの受診時に呼吸数34/分(頻呼吸:24/分以上)みられているため。ちなみに、1回換気量とは、安静時に意識せずに行っている呼吸1回あたりの換気量である。1回換気量のうち、ガス交換が可能な領域(呼吸細気管支と肺胞)を出入りする分が有効な換気量であり、ガス交換が行われない領域(鼻腔・口腔・気管・気管支・終末細気管支)を出入りする分はガス交換には無効な死腔換気量である。
2.× 逆である吸気よりも呼気を促すと効果的である。口すぼめ呼吸とは、呼気時に口をすぼめて抵抗を与えることにより気道内圧を高め、これにより末梢気管支の閉塞を防いで肺胞中の空気を出しやすくする方法である。鼻から息を吸い、呼気は吸気時の2倍以上の時間をかけて口をすぼめてゆっくりと息を吐く。
3.× 経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>は、「上昇」ではなく低下している。なぜなら、Aさんの最近の歩行時は、息切れが強くなってきた自覚があり、受診時には口唇のチアノーゼが認められているため。
4.〇 正しい。病状が進行すると動脈血二酸化炭素分圧<PaCO2>が上昇する。動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)とは、動脈血中の二酸化炭素の分圧を表す。換気の指標として用いられる。正常値は35〜45Torr(mmHg)であり、PaCO2>45Torr(mmHg)の状態だと、換気量が低下していることを示す。

(※図引用:yakugaku lab様HP)

 

 

 

 

 

44 中心静脈栄養法を受けている患者の看護について適切なのはどれか。

1.カテーテルの刺入部は見えないように覆う。
2.カテーテル刺入部を定期的に消毒する。
3.カテーテルの固定位置を毎日確認する。
4.予防的に抗菌薬の投与を行う。

解答3

解説

中心静脈栄養法とは?

中心静脈栄養法(TPN:Total Parenteral Nutrition)とは、消化管の消化吸収障害があり、口から栄養を補給できない場合に、中心静脈(上大静脈、下大静脈)にカテーテルを留置して、高カロリーの輸液を行う方法である。高カロリー輸液を行うため、高血糖、肝機能障害などの合併症、血流感染や静脈炎などのリスクがある。そのため、衛生面など管理には細心の注意が必要である。また、腸管粘膜が萎縮し、消化機能が低下し、血栓が形成されることがある。

1.× カテーテルの刺入部は見えないように覆う必要はない。むしろカテーテルの刺入部は、こすれて炎症が起こっていないか?、感染がみられないか?など観察するため見えるようにしておく。
2.× カテーテル刺入部の消毒は、「定期的」ではなく、ドレッシングの交換と一緒に行う。ドレッシング材の交換は、目に見えて汚れがみられる際に行うことが多いが、最低でも1週間に1回は交換する必要がある。
3.〇 正しい。カテーテルの固定位置を毎日確認する。なぜなら、皮膚トラブル(発赤やただれ)などになりやすいため。また問題なく中心静脈栄養法が行えているか確認できる。
4.× 予防的に抗菌薬の投与を行う必要はない。抗菌薬とは、細菌の増殖を抑制したり殺したりする働きのある化学療法剤のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。

 

 

 

 

45 高尿酸血症で正しいのはどれか。

1.痛風結節は疼痛を伴う。
2.痛風発作は飲酒で誘発される。
3.痛風による関節炎の急性期に尿酸降下薬を投与する。
4.血清尿酸値9.0mg/dL以下を目標にコントロールする。

解答2

解説

痛風とは?

 痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

1.× 痛風結節は疼痛を伴わない。痛風結節とは、痛風発作を治療せずに放置しておくと体内の尿酸が異常に多い状態が続き、手足の関節部付近や耳などに尿酸の塊が沈着してくることである。痛風により疼痛を伴う原因は、急性痛風関節炎(痛風発作)で、つまり関節の炎症により生じる。
2.〇 正しい。痛風発作は飲酒で誘発される。なぜなら、アルコールの利尿作用により、血清尿酸値はさらに上昇するため。適量は1日に純アルコールで20gとされている。尿酸値が高い状態が続くと、血液中に溶けきれなくなった尿酸の結晶が関節に沈着する。他にも、激しい運動、ストレス、尿酸値の急激な変動などが誘因となる。
3.× 痛風による関節炎の急性期に尿酸降下薬を投与する必要はない。なぜなら、尿酸値の急激な変動などが誘因となるため。むしろ症状を悪化してしまう可能性がある。急性期は症状緩和まで(炎症を収まるまで)待ち、症状が緩和したら、尿酸降下薬を投与する。
4.× 血清尿酸値「9.0mg/dL」ではなく、6.0mg/dL以下(基準値:2.5~6.0mg/dL)を目標にコントロールする。尿酸は難溶性の物質で、血清尿酸値7mg/dlを超えると析出しやすくなり急性関節炎の原因になる。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生される。プリン体が多く含む食材として、豚や牛のレバー、アジやさんまの干物などがあげられる。

 

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