第112回(R8)保健師国家試験 解説【午前31~35】

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31 令和元年の時点で「1日の果物摂取量が100g未満の者」は20歳以上の60%である。
 20歳以上の集団から無作為に選んだ100人の中で「1日の果物摂取量が100g未満の者」の人数が従う確率分布として適切なのはどれか。

1.F分布
2.t分布
3.正規分布
4.二項分布
5.χ〈カイ2乗〉分布

解答

解説

1.× F分布は、100人中何人が該当するかを数える場面には用いない。なぜなら、F分布とは、主に2つの分散の比を扱う分布であるため。例えば、A地域とB地域で果物摂取量のばらつき、つまり分散が異なるかを比較する場合には、F分布が関係する。

2.× t分布は、該当者数を数える場面には用いない。なぜなら、t分布は、母分散が不明なときの平均値の推定や検定に用いる分布であるため。例えば、100人の平均果物摂取量が母集団の平均と異なるかを検定する場合には、t分布が関係する。

3.× 正規分布は、該当者数を数える場面には用いない。なぜなら、正規分布は、連続量の分布を扱うことが多いため。例えば、100人の果物摂取量そのもの、つまり50g、120g、200gなどの連続量の分布を考えるなら、正規分布を近似的に考える場面がある。

4.〇 正しい。二項分布が、20歳以上の集団から無作為に選んだ100人の中で「1日の果物摂取量が100g未満の者」の人数が従う確率分布である。
・二項分布とは、一定の成功確率をもつ独立した試行を複数回行い、成功回数を数える分布である。

5.× χ〈カイ2乗〉分布は、該当者数を数える場面には用いない。なぜなら、χ〈カイ2乗〉分布は、主に度数のずれや分散に関する検定で用いられる分布であるため。例えば、観察された人数と期待される人数に差があるかを検定する場合に用いる。

 

 

 

 

 

32 薬剤Aが薬剤Bと比較して高頻度に肝機能障害を起こすかどうか、データベースを用いて評価した。
 統計的仮説検定およびその解釈として正しいのはどれか。

1.p値は肝機能障害発症確率のことである。
2.有意水準は統計的仮説検定を実施した後で決める。
3.対立仮説は「薬剤Aと薬剤Bの肝機能障害発症頻度に差はない」である。
4.有意水準より大きなp値が得られた場合、薬剤Aと薬剤Bの肝機能障害発症頻度が同程度であると示されたことにはならない。
5.有意水準より小さなp値が得られた場合、分析に用いた人数によらず薬剤Aは薬剤Bと比較して高頻度に肝機能障害を引き起こすと判断する。

解答

解説

1.× p値は、肝機能障害発症確率のこと「ではない」。
・p値とは、帰無仮説が正しいと仮定した場合に、観察されたデータ以上に極端な結果が得られる確率である。つまり、観察された差が偶然で説明できる程度を表す値である。

2.× 有意水準は、統計的仮説検定を実施した「後」ではなくで決める。なぜなら、有意水準を検定後に決めると、結果に合わせて結論を操作できてしまうため。
・有意水準とは、帰無仮説を棄却するかどうかを判断する基準である。一般的には、5%、つまり0.05がよく使われる。例えば、研究計画の段階で有意水準を5%と決めていた場合、p値が0.04なら有意、p値が0.08なら有意ではないと判断する。

3.× 「対立仮説」ではなく帰無仮説は、「薬剤Aと薬剤Bの肝機能障害発症頻度に差はない」である。
・帰無仮説とは、「薬剤Aと薬剤Bの肝機能障害発症頻度に差はない」ことを指す。
・対立仮説とは、「薬剤Aは薬剤Bより肝機能障害発症頻度が高い」ことを指す。

4.〇 正しい。有意水準より大きなp値が得られた場合、薬剤Aと薬剤Bの肝機能障害発症頻度が同程度であると示されたことにはならない。なぜなら、p値が有意水準より大きい場合は、帰無仮説を棄却できないという意味であるため。つまり、有意差なしは「差がない証明」ではなく、「差があるとはいえない」だけである。

5.× 有意水準より小さなp値が得られた場合「でも」、人数によらず機械的に判断してよいわけではない。なぜなら、p値は、効果の大きさだけでなく分析人数の影響を強く受けるため。逆に、人数が少ない研究では、実際には大きな差があっても、検出力不足でp値が有意にならないこともある。したがって、効果量・信頼区間・臨床的重要性も確認する必要がある。

 

 

 

 

 

33 人口に関連する指標の説明で正しいのはどれか。

1.75歳以上の人口割合を高齢化率という。
2.老年化指数は(老年人口÷総人口)×100で算出する。
3.老年人口指数は(老年人口÷年少人口)×100で算出する。
4.高齢化社会から高齢社会へ移行する所要期間を倍加年数という。
5.総人口に占める高齢者の割合が20%以上の社会を超高齢社会という。

解答

解説

年齢構成指数

・年少人口:0~14歳
・生産年齢人口:15~64歳
・老年人口:65歳以上
・年少人口指数:年少人口/生産年齢人口×100
・老年人口指数:老年人口/生産年齢人口×100
・従属人口指数:(年少人口+老年人口)/生産年齢人口×100
・老年化指数:老年人口/年少人口×100

1.× 「75歳以上」ではなく65歳以上の人口割合を高齢化率という。
・老年人口割合(高齢化率)とは、総人口に占める65歳以上の人口割合をという。平成29年(2017年)は27.3%である。日本は、高齢化率が平成19年(2007年)に21%を超え、超高齢社会に突入した。

2.× 「老年化指数」ではなく高齢化率は、(老年人口÷総人口)×100で算出する。
・老年化指数とは、年齢構造指数の一種で、年少人口(通常15歳未満人口)に対する老年人口(65歳以上人口)の比率をいう。

3.× 「老年人口指数」ではなく老年化指数は(老年人口÷年少人口)×100で算出する。老年化指数は「子どもに対して高齢者がどのくらいいるか」を表す。
・老年人口指数とは、老年人口を生産年齢人口で割って算出する指標である。老年人口指数は「働く世代に対して高齢者がどのくらいいるか」を表す。

4.〇 正しい。高齢化社会から高齢社会へ移行する所要期間を倍加年数という。なぜなら、高齢化社会は高齢化率7%以上、高齢社会は高齢化率14%以上であり、その2倍化に要した期間を倍加年数というため。
・倍加年数とは、高齢化率が7%から14%に上昇するまでの期間をいう。

5.× 総人口に占める高齢者の割合が、「20%以上」ではなく21%以上の社会を超高齢社会という。

MEMO

・高齢化社会とは、高齢化率が7%以上14%未満のことである。
・高齢社会とは、高齢化率が14%以上21%未満のことである。
・超高齢社会とは、高齢化率が21%以上のことである。

 

 

 

 

 

34 オタワ憲章で提唱されているヘルスプロモーションの活動方針で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.共生社会の実現
2.個人技術の向上
3.適正技術の使用
4.地域資源の有効活用
5.健康的な公共政策づくり

解答2・5

解説

ヘルスプロモーションとは?

ヘルスプロモーション(健康教育)は、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義される。①健康な公共政策づくり、②健康を支援する環境づくり、③地域活動の強化、④個人技術の開発、⑤ヘルスサービスの方向転換などが挙げられる。保健部門だけの責任にとどまらず、人々のライフスタイルや生活の質(QOL)にかかわるものであり、個人の能力だけでなく環境の整備も含まれる。オタワ憲章(1986年)で提唱され、日本では、健康日本21(2000年)で基本理念に取り入れられている。

健康的な公共政策づくり:健康は、人々の暮らしを支えている公共政策(道や諸施設、衛生上欠かせない上下水道の整備など)によって保証されるため、公共政策そのものを健康的なものにする必要がある。
②健康を支援する環境づくり:環境(ハード・ソフト面)を整備することで、住民一人ひとり健康づくりを支援する。
③地域活動の強化:住民組織を活性化することで健康づくりを地域での住民活動を強化するような働きかけを行う。
個人技術の開発:住民一人ひとり、そして専門家が、健康づくりに取り組むために必要な技術を身につけられるような働きかけや取り組みを行う。
⑤ヘルスサービスの方向転換:これまで疾病対策として実施されてきた事業(ヘルスサービス)を、より積極的に健康づくりの場としてとらえ見直しを行う。

1.× 共生社会の実現は、オタワ憲章の5つの活動方針に該当しない
・共生社会とは、さまざまな人々(高齢者、障害者、子ども、外国人など)が互いに尊重し合いながら暮らす社会をいう。これは、地域福祉や障害者福祉、地域包括ケア、ソーシャルインクルージョンなどで重要な考え方である。

2.〇 正しい。個人技術の向上は、オタワ憲章で提唱されたヘルスプロモーションの活動方針の1つである。
個人技術の開発:住民一人ひとり、そして専門家が、健康づくりに取り組むために必要な技術を身につけられるような働きかけや取り組みを行う。

3.× 適正技術の使用は、オタワ憲章の5つの活動方針に該当しない
・適正技術とは、その地域の文化、経済状況、人材、資源に合った技術を用いることである。高度で高額な医療機器だけに依存するのではなく、地域で継続可能な方法を選ぶ。これは、1978年のアルマ・アタ宣言で提唱されたプライマリ・ヘルス・ケアの考え方と関係が深い。

4.× 地域資源の有効活用は、オタワ憲章の5つの活動方針に該当しない
・地域資源とは、地域にある人材、施設、団体、制度、ネットワークなどを指す。保健師活動では、地域資源を把握し、有効に活用することは非常に重要である。

5.〇 正しい。健康的な公共政策づくりは、オタワ憲章で提唱されたヘルスプロモーションの活動方針の1つである。
健康的な公共政策づくり:健康は、人々の暮らしを支えている公共政策(道や諸施設、衛生上欠かせない上下水道の整備など)によって保証されるため、公共政策そのものを健康的なものにする必要がある。

オタワ憲章とは?

オタワ憲章とは、ヘルスプロモーションに関する宣言である。ヘルスプロモーション(健康教育)は、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」と定義される。①健康な公共政策づくり、②健康を支援する環境づくり、③地域活動の強化、④個人技術の開発、⑤ヘルスサービスの方向転換などが挙げられる。保健部門だけの責任にとどまらず、人々のライフスタイルや生活の質(QOL)にかかわるものであり、個人の能力だけでなく環境の整備も含まれる。オタワ憲章(1986年)で提唱され、日本では、健康日本21(2000年)で基本理念に取り入れられている。

 

 

 

 

 

35 A市の保健師は通いの場に参加している高齢者を対象に、基本チェックリストを使用して生活機能を評価することにした。
 運動機能の低下を判断する基準に含まれる項目はどれか。2つ選べ。

1.友人の家を訪ねていますか
2.15分位続けて歩いていますか
3.週に1回以上は外出していますか
4.転倒に対する不安は大きいですか
5.バスや電車で1人で外出していますか

解答2・4

解説

(※図引用:「表4 基本チェックリスト」厚生労働省HPより)

1.× 友人の家を訪ねていますか
これは、日常生活関連動作(1~5の項目)を判断する基準に含まれる項目である。

2.〇 正しい。15分位続けて歩いていますか
これは、運動機能(6~10の項目)を判断する基準に含まれる項目である。

3.× 週に1回以上は外出していますか
これは、閉じこもり(16~17の項目)を判断する基準に含まれる項目である。

4.〇 正しい。転倒に対する不安は大きいですか
これは、運動機能(6~10の項目)を判断する基準に含まれる項目である。

5.× バスや電車で1人で外出していますか
これは、日常生活関連動作(1~5の項目)を判断する基準に含まれる項目である。

 

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