第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後111~115】

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次の文を読み109~111 の問いに答えよ。
 Aさん(58歳、男性)は、年金の給付を受けて生活している父親(82歳)と2人暮らしで、母親は2年前に亡くなっている。20歳のときに統合失調症と診断された。20歳代で何回か仕事に就いたが長続きはしなかった。40歳からは無職で、デイケアへ通所していた。1年前にデイケアを中断してからは、ほとんどの時間を自宅で過ごしているが、月1回の外来通院は継続している。Aさんが飲まなかった薬がたくさん残っていることを父親が発見し、主治医に相談した。この相談をきっかけに、週1回の精神科訪問看護を導入することになった。初回訪問時にAさんは「薬は飲み忘れたんです。心配かけてごめんなさい」と父親と訪問看護師に話した。

問題111 初回訪問から6か月、Aさんの状態は安定し、デイケアへ週3回程度は通所できるようになった。一方で、父親は「Aは食事も作れないし、家のことができないので、自分が死んだ後のことを考えると1人で生きていけるのかが心配だ。どうしたらよいか」と訪問看護師に相談した。それを聞いたAさんも「父が死んだ後の生活が心配だ」と話した。
 現時点でAさんと父親へ提案する社会資源で適切なのはどれか。

1.生活保護
2.地域移行支援
3.グループホーム
4.障害者権利擁護センター

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(58歳、男性、20歳:統合失調症
・2人暮らし(年金生活の父親、82歳
・2年前:母親死去。
・初回訪問から6か月:状態安定、デイケアへ週3回程度は通所できる。
・父親「Aは食事も作れないし、家のことができないので、自分が死んだ後のことを考えると1人で生きていけるのかが心配だ。どうしたらよいか」と。
・Aさん「父が死んだ後の生活が心配だ」と。
→Aさんは、家事ができないと推測でき、Aさん自身も心配している。家事や家のことができる社会資源を選択しよう。

1.× 生活保護とは、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。
2.× 地域移行支援とは、障害者支援施設や精神科病院にいる障害者に対して、住居の確保や障害福祉サービスを実際に体験ができるサポートなど地域生活へ移行するための支援である。具体的には、①住居の確保や②障害福祉サービスの体験利用・体験宿泊の支援などを行う。
3.〇 正しい。グループホームは、現時点でAさんと父親へ提案する社会資源である。共同生活援助<グループホーム>とは、『障害者総合支援法』の訓練等給付のひとつであり、ひとりで生活できない障害者が共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を受けるものである。主に夜間や休日に精神障害者が共同生活を営む住居で、食事の世話・服薬指導など、相談や日常生活の援助を行う。
4.× 障害者権利擁護センターとは、障害者虐待に関する相談や身近な相談機関の紹介、障害者を雇用する事業主等使用者による虐待についての通報、届出を受け付けている施設である。根拠法令は、障害者虐待防止法である。

生活保護制度とは?

生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。

①生活扶助:日常生活に必要な費用
②住宅扶助:アパート等の家賃
③教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
④医療扶助:医療サービスの費用
⑤介護扶助:介護サービスの費用
⑥出産扶助:出産費用
⑦生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
⑧葬祭扶助:葬祭費用

【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。

【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。

(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み112~114 の問いに答えよ。
 Aさん(80歳、女性)は発熱があり、呼吸状態が悪いため、外来を受診し肺炎と診断され緊急入院となった。入院時、病室でAさんは「ここはどこ」と話し混乱した様子であった。湿性の咳嗽があり、口唇の乾燥が著明である。同居の夫からの情報では、1週前から食事は摂れていたが、水分摂取量が減っていた。3日前から寝て過ごしていたが、トイレには自分で行くことができていた。身の回りのことは自立している。入院後に点滴静脈内注射 1,500mL/日の指示があり、抗菌薬が開始された。
 身体所見:身長152cm、体重45kg、体温38.0℃、呼吸数32/分、脈拍120/分、整、血圧107/80 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度93%(room air)。ジャパンコーマスケール〈JCS〉 I-2。
 検査所見:赤血球447万/μL、Hb12.5 g/dL、白血球16.600/μL、総蛋白 6.2g/dL、アルブミン4.0g/dL、血糖98mg/dL、Na151mEq/L、K4.0mEq/L、C197mEq/L、Ca8.7mg/dL、CRP23.0mg/dL。

問題112 Aさんの状態のアセスメントで適切なのはどれか。2つ選べ。

1.脱水
2.貧血
3.低栄養
4.視空間失認
5.電解質異常

解答1・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、女性、肺炎
・緊急入院:発熱があり、呼吸状態が悪い。
・入院時:病室で「ここはどこ」と混乱した様子。
・湿性の咳嗽、口唇の乾燥が著明。
・1週前:食事摂取可能、水分摂取量が減っていた
・3日前:寝て過ごし、トイレには自分で行ける。
身の回りのこと:自立
・入院後:点滴静脈内注射 1,500mL/日、抗菌薬開始。
【身体所見】身長152cm、体重45kg、体温38.0℃、呼吸数32/分、脈拍120/分、整、血圧107/80 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度 93% 。JCS: I-2。
【検査所見】赤血球447万/μL、Hb12.5 g/dL、白血球 16.600/μL、総蛋白 6.2g/dL、アルブミン 4.0g/dL、血糖 98mg/dL、Na151mEq/L、K 4.0mEq/L、C197mEq/L、Ca8.7mg/dL、CRP 23.0 mg/dL。
→正常範囲から逸脱している項目を確認していこう。正常範囲の基準値を覚えておくことが大切である。

1.〇 正しい。脱水は、Aさんの状態のアセスメントである。なぜなら、本症例は、口唇の乾燥が著明で、1週前に水分摂取量が減っていたため。また、Na151mEq/L(基準値:138~145mEq/L)であることから、高張性脱水(水欠乏性脱水)を引き起こしているといえる。脱水とは、生体において体液量が減少した状態をいう。水やナトリウムの喪失が原因で起こる。この際、ナトリウムの喪失を伴わず水欠乏を起こす病態を高張性脱水(水欠乏性脱水)や一次脱水という。脱水症状とは、体内の水分が2%失われると、のどの渇きを感じ、運動能力が低下しはじめる。3%失われると、強いのどの渇き、ぼんやり、食欲不振などの症状がおこり、4~5%になると、疲労感や頭痛、めまいなどの脱水症状が現れる。10%以上になると、死にいたることもある。
2.× 貧血は考えにくい。なぜなら、本症例のHb12.5 g/dLであるため。ヘモグロビンとは、酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。ヘモグロビンの値が、男性は13g/dl以下、女性は11g/dl以下になると、「貧血」と診断される。
3.× 低栄養は考えにくい。なぜなら、本症例のアルブミン 4.0g/dLであるため。アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合(3.5g/dL以下)は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。
4.× 視空間失認は考えにくい。なぜなら、設問文からそのような記述はなく、また身の回りのことは自立しているため。視空間失認とは、物が空間で占める位置を認知できない状態のことである。例えば、目の前にある小さなボールをつかめなくなるなど。頭頂葉および後頭葉の障害(Alzheimer型認知症)でみられる。
5.〇 正しい。電解質異常は、Aさんの状態のアセスメントである。なぜなら、本症例のNa151mEq/L(基準値:138~145mEq/L)であるため。電解質異常とは、体内の電解質バランスが崩れることによって引き起こされる病気のことである。電解質とは、体内の液体に存在するイオン(带電粒子)のことで、主なものにナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)などがある。電解質異常は、体液の浸漏や脱水、腎臓や腸の異常、薬剤などによって引き起こされる。症状は異常によって異なる。

 

 

 

 

 

次の文を読み112~114 の問いに答えよ。
 Aさん(80歳、女性)は発熱があり、呼吸状態が悪いため、外来を受診し肺炎と診断され緊急入院となった。入院時、病室でAさんは「ここはどこ」と話し混乱した様子であった。湿性の咳嗽があり、口唇の乾燥が著明である。同居の夫からの情報では、1週前から食事は摂れていたが、水分摂取量が減っていた。3日前から寝て過ごしていたが、トイレには自分で行くことができていた。身の回りのことは自立している。入院後に点滴静脈内注射 1,500mL/日の指示があり、抗菌薬が開始された。
 身体所見:身長152cm、体重45kg、体温38.0℃、呼吸数32/分、脈拍120/分、整、血圧107/80 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度93%(room air)。ジャパンコーマスケール〈JCS〉 I-2。
 検査所見:赤血球447万/μL、Hb12.5 g/dL、白血球16.600/μL、総蛋白 6.2g/dL、アルブミン4.0g/dL、血糖98mg/dL、Na151mEq/L、K4.0mEq/L、C197mEq/L、Ca8.7mg/dL、CRP23.0mg/dL。

問題113 入院当日、Aさんは日中は会話ができていたが、夕方からそわそわしながら落ち着かない様子であった。また、話のつじつまが合わず、朝と夕方を間違え急に大きな声を出し、夜中に起きだして自分の荷物を触っていることがあった。翌日、日中は眠気を訴えながらも眠ることなく静かに過ごし、夜間は焦燥があり眠れていない。
 Aさんの状態はどれか。

1.せん妄
2.睡眠時遊行症
3.レム睡眠行動障害
4.睡眠時無呼吸症候群

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、女性、肺炎)
・緊急入院:発熱があり、呼吸状態が悪い。
・入院時:病室で「ここはどこ」と混乱した様子
・入院当日:日中会話可能、夕方からそわそわしながら落ち着かない様子。
話のつじつまが合わず朝と夕方を間違え急に大きな声を出し、夜中に起きだして自分の荷物を触っている。
・翌日:日中は眠気を訴えながらも眠ることなく静かに過ごし、夜間は焦燥があり眠れていない。
→本症例は、せん妄が疑われる。ほかの選択肢は睡眠中に起こることである。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。

1.〇 正しい。せん妄がAさんの状態である。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。
2.× 睡眠時遊行症とは、夢遊病ともいい、睡眠中にもかかわらず体動が出現しぼんやりと歩き回るものである。無意識の状態で起きだし、歩いたり何かをした後に再び就眠するが、その間の出来事を記憶していない状態を指す。その時間は、30秒から30分までの長さになり得る。夢の映像はまったく、または少ししか想起されないのが特徴である。睡眠障害として睡眠時随伴症(パラソムニア)のひとつに分類される。小児に好発する。
3.× レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。
4.× 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に無呼吸が繰り返され、睡眠の分断化、睡眠の減少により日中過度の眠気などを伴う病態である。子どもの睡眠時無呼吸症候群は、扁桃腺やアデノイド(鼻から喉へ向かう部分にあるリンパ腺)の肥大だけでなく、あごが小さいことや花粉症・アレルギー性鼻炎での鼻づまりが原因となって起こる。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

 

 

 

 

次の文を読み112~114 の問いに答えよ。
 Aさん(80歳、女性)は発熱があり、呼吸状態が悪いため、外来を受診し肺炎と診断され緊急入院となった。入院時、病室でAさんは「ここはどこ」と話し混乱した様子であった。湿性の咳嗽があり、口唇の乾燥が著明である。同居の夫からの情報では、1週前から食事は摂れていたが、水分摂取量が減っていた。3日前から寝て過ごしていたが、トイレには自分で行くことができていた。身の回りのことは自立している。入院後に点滴静脈内注射 1,500mL/日の指示があり、抗菌薬が開始された。
 身体所見:身長152cm、体重45kg、体温38.0℃、呼吸数32/分、脈拍120/分、整、血圧107/80 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度93%(room air)。ジャパンコーマスケール〈JCS〉 I-2。
 検査所見:赤血球447万/μL、Hb12.5 g/dL、白血球16.600/μL、総蛋白 6.2g/dL、アルブミン4.0g/dL、血糖98mg/dL、Na151mEq/L、K4.0mEq/L、C197mEq/L、Ca8.7mg/dL、CRP23.0mg/dL。

問題114 入院2日、病棟の看護師でAさんへの援助の方針について話し合った。
 Aさんへの対応で適切なのはどれか。

1.日中の離床を促すために歩行に付き添う。
2.夜間はベッドからの転落防止のために身体的拘束を行う。
3.睡眠時間の確保のために夕方に3時間の睡眠をとるように勧める。
4.症状緩和のためにベンゾジアゼピン系睡眠薬の処方を医師に依頼する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(80歳、女性、肺炎)
・緊急入院:発熱があり、呼吸状態が悪い。
・入院時:病室で「ここはどこ」と混乱した様子
・入院当日:日中会話可能、夕方からそわそわしながら落ち着かない様子。
話のつじつまが合わず朝と夕方を間違え急に大きな声を出し、夜中に起きだして自分の荷物を触っている。
・翌日:日中は眠気を訴えながらも眠ることなく静かに過ごし、夜間は焦燥があり眠れていない。
→本症例は、せん妄が疑われる。ほかの選択肢は睡眠中に起こることである。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。

1.〇 正しい。日中の離床を促すために歩行に付き添う。なぜなら、日中の離床はせん妄の予防となるため。昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をすることが大切である。
2.× 夜間はベッドからの転落防止のために身体的拘束を行う必要はない。なぜなら、身体拘束は看護師の判断で行うことはできないため。身体抑制は、道具や薬剤を用いて、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制することを言い、内容としては身体拘束とほぼ同義である。身体拘束が認められるためには、①切迫性、②非代替性、③一時性の3つの要件がすべて満たされていなければならない。したがって、身体拘束は最終手段である。
3.× 睡眠時間の確保のために夕方に3時間の睡眠をとるように勧める必要はない。なぜなら、3時間の睡眠は夜間の睡眠に支障をきたすため。夜間の睡眠周期は約90分であるため、30分程度の昼寝は、深いノンレム睡眠に至らないので夜の睡眠に影響はないとされている。
4.× 症状緩和のためにベンゾジアゼピン系睡眠薬の処方を医師に依頼する必要はない。なぜなら、高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多いため。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、GABAA受容体の作用を増強し、神経活動を抑制する。睡眠薬・抗不安薬として最も広く用いられている。比較的安全性が高いが、最近は依存性の問題が重視されており、適切な処方・十分な服薬指導が重要である。手指のふるえ、冷汗、不安、いらいら、不眠などの離脱症状(身体依存)をきたす。

せん妄とは?

せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。
【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

 

 

 

 

 

次の文を読み115~117 の問いに答えよ。
 Aさん(50歳、男性、自営業)は妻(48歳)、長男(23歳、会社員)と3人で暮らしている。3年前から歩行時のふらつきを自覚していたが、日常生活動作〈ADL〉は自立していた。最近、転倒が多くなり医療機関を受診して頭部CT検査を受けたところ、小脳と脳幹に萎縮を認め、遺伝性の脊髄小脳変性症と診断された。Aさんは「母も同じ疾患で亡くなりました。妹が同じ敷地内に1人で暮らしていますが、妹も転ぶことが多くなり、医師の勧めで遺伝子診断を受ける予定です。明日、保健所に難病の医療費助成の申請に行くのですが、保健師に伝えた方がよいことはありますか」と看護師に質問した。

問題115 Aさんから保健師に伝える内容で優先度が高いのはどれか。

1.長男の仕事内容
2.Aさんの経済状況
3.母親の病状の経過
4.妹の遺伝子診断の予定

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(50歳、男性、自営業、脊髄小脳変性症
・3人暮らし:妻(48歳)、長男(23歳、会社員)。
・頭部CT検査:小脳と脳幹に萎縮を認め、遺伝性の脊髄小脳変性症と診断。
・Aさん「母も同じ疾患で亡くなりました。妹が同じ敷地内に1人で暮らしていますが、妹も転ぶことが多くなり、医師の勧めで遺伝子診断を受ける予定です。明日、保健所に難病の医療費助成の申請に行くのですが、保健師に伝えた方がよいことはありますか」と。
→【医療費助成制度について】
①都道府県・指定都市の窓口に申請する。
②医療費助成の対象者:指定難病に罹患し、重症度分類等による病状の程度が一定以上であるとして認定を受けた者。
③患者の自己負担は2割で、自己負担上限額(月額)が設定されている。
④自己負担上限額は、応能負担(世帯の所得に応じて設定)されている。
⑤医療費助成は、都道府県・指定都市が指定する指定医療機関が行う特定医療に対して行われる。
⑥特定医療費の支給に要する費用は、都道府県と国が50%ずつ負担している。
(※参考「指定難病の要件について」厚生労働省HPより)

1.× 長男の仕事内容より優先されるものが他にある。なぜなら、医療費助成の申請にあたって、長男の仕事内容は関連性は薄いため。また、本症例は最近、転倒が多くなったもののADLは自立を維持していると考えらえる。つまり、長男の介護はまだ必要ではないと考えられる。
2.〇 正しい。Aさんの経済状況は、Aさんから保健師に伝える内容で優先度が高い。なぜなら、医療費助成制度について、自己負担上限額は、応能負担(世帯の所得に応じて設定)されているため。
3.× 母親の病状の経過より優先されるものが他にある。なぜなら、医療費助成の申請にあたって、母親の病状の経過は関連性は薄いため。ただし、医療費助成の申請には必要ないものの、病気が同じく進行をきたしやすいため、情報収集することが大切である。
4.× 妹の遺伝子診断の予定より優先されるものが他にある。なぜなら、医療費助成の申請にあたって、妹の遺伝子診断の予定は関連性は薄いため。ただし、本症例の妹が確定診断を受けた場合は、同じ敷地内に1人で暮らしているため、今後のサービス導入の検討を行う必要が出てくる。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

 

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