第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前96~100】

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次の文を読み94~96の問いに答えよ。
 Aさん(57歳、男性)は、妻(50歳)と2人で暮らしている。21歳から喫煙習慣があり、5年前に風邪で受診した際に肺気腫と診断された。最近は坂道や階段を昇ると息切れを自覚するようになってきた。

96 5年後、Aさんは急性増悪による入退院を繰り返していた。今回の入院では呼吸機能の低下がみられたため、退院後に在宅酸素療法〈HOT〉を導入することになった。Aさんは「家での生活で気をつけることは何ですか」と看護師に質問した。
 Aさんへの指導内容で適切なのはどれか。

 1.「寒いときは電気毛布を使ってください」
 2.「入浴時は酸素チューブを外してください」
 3.「ガス調理器を電磁調理器に変更してください」
 4.「呼吸が苦しいときは楽になるまで酸素流量を上げてください」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(男性、肺気腫
・肺炎を伴うCOPDの急性増悪:入退院を繰り返す。
・呼吸機能の低下がみられた。
・退院後:在宅酸素療法を導入する。
→在宅酸素療法に関する生活指導を提供する。在宅酸素療法とは、酸素療法を自宅で実施することをさす。適応として、慢性呼吸不全や慢性心不全により体内の酸素濃度が低下している人に対して行われる。在宅でも安心して酸素療法を受けられるよう、生活指導などの看護支援が必要で、在宅酸素療法を実施している間は、火気厳禁となる。

 1.× 電気毛布の使用を控える。なぜなら、在宅酸素療法による酸素が、燃焼する恐れがあるため。他にも、カイロやヘアドライヤーなどの発熱する物品を近づけたり、静電気を生じやすいものの使用を避けるよう指導する。
 2.× 入浴時に酸素チューブを外す必要はない。なぜなら、入浴は呼吸が止まりやすいため。酸素飽和度が下がりやすく、医師によっては入浴時は酸素流量を上げるよう指示することもある。他にも注意することとして、①胸郭の動きを制限させないためみぞおちの上まで湯に浸からない、②湯温は40℃前後に設定する、③15分以上は浸からない、④浴室や脱衣所を前もって温めておく、⑤着替えのための椅子を用意しておくなど生活指導を実施する。
 3.〇 正しい。「ガス調理器を電磁調理器に変更してください」と退院指導する。なぜなら、在宅酸素療法を実施している間は、火気厳禁となるため。
 4.× 「呼吸が苦しいときは楽になるまで酸素流量を上げてください」との指導より、ほかに優先度が高いものがある。なぜなら、酸素流量の設定は医師による指示が必要であるため。看護師が評価し、酸素流量を上げる必要がある場合は、担当医師に「どの動作で息苦しそうにしているのか?」を報告し医師の判断を伺う。

 

 

 

 

 

次の文を読み97~99の問いに答えよ。
 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。小学校の教員を定年退職後、書道教室に月2回、体操教室に月1回通っている。20年前に高血圧症と診断され、月に1回かかりつけの病院を受診し、内服治療をしている。6か月前から、Aさんは病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れることがあり、かかりつけの医師に相談した。Aさんは認知症専門医を紹介され、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉18点で、軽度のAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断された。

97 Aさんに出現している認知機能障害はどれか。

 1.脱抑制
 2.近時記憶障害
 3.実行機能障害
 4.物盗られ妄想

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(72歳、女性、1人暮らし、20年前:高血圧症)
・6か月前:病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れる
・〈MMSE〉18点、軽度のアルツハイマー型認知症と診断。
→アルツハイマー型認知症とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

 1.× 脱抑制は、前頭側頭型認知症にみられやすい認知機能障害である。脱抑制とは、状況に対する反応としての衝動や感情を抑えることが不能になった状態のことである。
 2.〇 正しい。近時記憶障害がAさんに出現している認知機能障害である。なぜなら、本症例は、「病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れる」という様子が見られるため。ちなみに、近時記憶とは、即時記憶より保持時間の長い記憶で、長期記憶に分類される。時間間隔について定義はないが、3分~数日が目安とされている。ちなみに、週~年単位となると遠隔記憶となる。
 3.× 実行機能障害は、前頭側頭型認知症にみられやすい認知機能障害である。実行機能障害(遂行機能障害)とは、中核症状のひとつである。論理的・計画的な行動ができなくなることである。例えば、料理を作る、洗濯をするなどの段取りのことをいい、前頭葉の障害で出現する。
 4.× 物盗られ妄想は、アルツハイマー型認知症にみられやすい認知機能障害であるが、本症例に出現しているとは設問文から判断できない。物盗られ妄想は、記銘力障害による置き忘れしまい忘れが多くなり、①身近な親しい人に盗られたと即断してしまう、②興奮したり騒いだりして、警察に連絡する場合も多い。盗まれるものは、お金・財布・通帳などの財産に関係するものが多い。アルツハイマー型認知症で認められる。言葉での説得は難しいため、一緒に探したり、自分で納得するように仕向けたりする方がよい。

前頭側頭型認知症とは?

 病理所見として、前頭葉と側頭葉が特異的に萎縮する特徴を持つ認知症である。脳血流量の低下や脳萎縮により人格変化、精神荒廃が生じ、植物状態におちいることがあり、2~8年で衰弱して死亡することが多い。発症年齢が50~60代と比較的若く、初発症状は人格障害・情緒障害などがみられるが、病期前半でも記憶障害・見当識障害はほとんどみられない。働き盛りの年代で発症することが多いことで、患者さんご本人が「自分は病気である」という自覚がないことが多い。その後、症状が進行するにつれ、性的逸脱行為(見知らぬ異性に道で抱きつくなどの抑制のきかない反社会的な行動)、滞続言語(何を聞いても自分の名前や生年月日など同じ語句を答える)、食行動の異常(毎日同じものを食べ続ける常同行動)などがみられる。治療は、症状を改善したり、進行を防いだりする有効な治療方法はなく、抗精神病薬を処方する対症療法が主に行われている。

(参考:「前頭側頭型認知症」健康長寿ネット様HPより)

 

 

 

 

 

次の文を読み97~99の問いに答えよ。
 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。小学校の教員を定年退職後、書道教室に月2回、体操教室に月1回通っている。20年前に高血圧症と診断され、月に1回かかりつけの病院を受診し、内服治療をしている。6か月前から、Aさんは病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れることがあり、かかりつけの医師に相談した。Aさんは認知症専門医を紹介され、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉18点で、軽度のAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断された。

98 診断から2か月後、かかりつけの病院の看護師にAさんは「50年以上住んでいるこの土地で、できるだけ他人の迷惑にならず生活を続けたいと思って貯金もしてきました。私は軽い認知症だと言われたのですが、これからも自分でお金の管理ができるか心配です。どうしたらよいのでしょうか。私が使えるサービスがあれば知りたいです」と話した。
 Aさんが利用できるのはどれか。

 1.生活保護制度
 2.地域生活支援事業
 3.後期高齢者医療制度
 4.日常生活自立支援事業

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(72歳、女性、1人暮らし、20年前:高血圧症)
・MMSE:18点、軽度のアルツハイマー型認知症と診断。
・2か月後のAさんの発言
・できるだけ他人の迷惑にならず生活を続けたい。
貯金もしていた。
これからも自分でお金の管理ができるか心配。
私が使えるサービスがあれば知りたい。
→本症例は、将来に関して心配している。現時点では貯金をしつつ一人暮らしもしている。病識もあり、他人の迷惑をかけないよう生活を続けたいという希望も聞かれる。

 1.× 生活保護制度とは、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている制度である。本症例は、貯金をしているため、生活困窮者とは言えない。
 2.× 地域生活支援事業とは、『障害者総合支援法』に定められるサービスである。相談支援、移動支援、コミユニケーション支援、地域活動支援センターや福祉ホームの運営、日常生活用具の給付・貸与などが行われる。障害者及び障害児が基本的人権を享受する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、市町村等が実施主体となり、地域の特性や利用者の状況に応じ、柔軟な形態により計画的に実施する事業である(※参考:「地域生活支援事業」厚生労働省HPより)。本症例は、アルツハイマー型認知症であるため、障害者として対象と言い難い。
 3.× 後期高齢者医療制度とは、2008年施行の「高齢者の医療の確保に関する法律」を根拠法とする日本の医療保険制度である。公的医療保険制度とは、病気やケガをした時に医療費の一部を公的な機関が負担する制度のことをいう。日本は「国民皆保険制度」を採用しており、日本国民すべてに加入が義務づけられている。本症例は、「今後の生活とサービス」に関して不安が聞かれている。後期高齢者医療制度は既に使用している制度である。
 4.〇 正しい。日常生活自立支援事業をAさんが利用できるサービスである。日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものである。『社会福祉法』の福祉サービス利用援助事業の一環として都道府県社会福祉協議会などが行うものである。

 

 

 

 

 

次の文を読み97~99の問いに答えよ。
 Aさん(72歳、女性)は、1人で暮らしている。小学校の教員を定年退職後、書道教室に月2回、体操教室に月1回通っている。20年前に高血圧症と診断され、月に1回かかりつけの病院を受診し、内服治療をしている。6か月前から、Aさんは病院の受診日を間違えたり、書道教室の日時を忘れることがあり、かかりつけの医師に相談した。Aさんは認知症専門医を紹介され、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉18点で、軽度のAlzheimer〈アルツハイマー〉型認知症と診断された。

99 診断から半年後、Aさんは、かかりつけの病院の看護師に「書道教室や体操教室は、部屋のカレンダーに書いて参加しています。ただ、最近、病院に行くときに薬が残っています。大切な薬だと先生から言われていますし、忘れずに飲みたいのですが、どうしたらよいでしょうか」と相談した。
 看護師のAさんへの対応で最も適切なのはどれか。

 1.「お薬手帳を毎朝見るようにしましょう」
 2.「薬のことは主治医に相談してください」
 3.「薬を飲んだらカレンダーに丸を付けてみませんか」
 4.「この病気の方は、薬を飲み忘れることがあります」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(72歳、女性、1人暮らし、20年前:高血圧症)
・MMSE:18点、軽度のアルツハイマー型認知症と診断。
・診断から半年後の様子
・書道教室や体操教室:部屋のカレンダーに書いて参加している。
・最近:病院に行くときに薬が残っている
・「大切な薬で、忘れずに飲みたい」。
→本症例は、薬を飲まない時がある。飲まない原因として①アルツハイマー型認知症であること、②「忘れずに飲みたい」と言っていることから、飲むことを忘れてしまっていることがあげられる。書道教室や体操教室に参加するため、カレンダーを見る習慣はついている。したがって、その習慣をAさんの内服に活用して対応するのが望ましい。

 1.× 「お薬手帳を毎朝見るようにしましょう」と伝える優先度は低い。なぜなら、本症例は軽度のアルツハイマー型認知症で、近時記憶障害がみられるため。新しいことをさらに行ってもらうことは難しい。
 2.× 「薬のことは主治医に相談してください」と伝える優先度は低い。なぜなら、本症例は「大切な薬で、忘れずに飲みたい」と言っているため。医師に相談を促すときは、薬効や内服頻度に関する事が多い。
 3.〇 正しい。「薬を飲んだらカレンダーに丸を付けてみませんか」と対応する。なぜなら、書道教室や体操教室への参加に際し、カレンダーを見る習慣はついているため。カレンダーに丸をつけることで、内服の飲み忘れを予防できる。
 4.× 「この病気の方は、薬を飲み忘れることがあります」と伝える優先度は低い。なぜなら、その飲み忘れを防ぐ手段を聞いているため。病気の理解は求めていない。

 

 

 

 

 

次の文を読み100~102の問いに答えよ。
 Aさん(70歳、女性)は夫(68歳)と2人で暮らしている。BMI26で左股関節の変形性関節症のため関節可動域の制限と疼痛があり、外出時はT字杖を使用している。症状が強いときに消炎鎮痛薬を服用しているが、日常生活動作は自立している。Aさんは過去に転倒したことはないが、左右の下肢の差が3cmあり、立ち上がるときにふらつくことがある。自宅で座って過ごす時間が長い。Aさんは定期受診のため夫に付き添われて外来を受診した。

100 Aさんの症状の悪化を予防するための説明で適切なのはどれか。

 1.運動はしない。
 2.減塩食をとる。
 3.体重を減らす。
 4.家事は夫に任せる。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(70歳、女性、BMI26左変形性股関節症
・2人暮らし:夫(68歳)
・関節可動域の制限と疼痛:外出時はT字杖を使用。
・症状が強いときに消炎鎮痛薬を服用。
・日常生活動作:自立
過去に転倒したことはない
・左右の下肢の差が3cmあり、立ち上がるときにふらつく
自宅で座って過ごす時間が長い
→二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっている。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多い。さらなる関節の変形を予防するための生活指導が必要となる。

→BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。

 1.× 運動を勧める。なぜなら、運動をすることで下肢筋力がつき、立ち上がりのふらつき防止、スムーズになるため。また、体重減少につながり、関節への負担軽減となる。
 2.× 減塩食をとる優先度は低い。なぜなら、減塩食はネフローゼ症候群(腎機能の低下)や高血圧症に対して行う生活指導であるため。ちなみに、減塩には、①漬物や汁物の摂取量を減らす、②外食や加工食品の摂取を控える、③だしを効かせる、④香味野菜を使用するなどがあげられる。
 3.〇 正しい。体重を減らす。なぜなら、関節に負担がかかりにくくなるため。変形や体重による荷重時痛が軽減できる。
 4.× 家事は夫に任せる優先度は低い。なぜなら、Aさんは過去に転倒したことがなく、ADLも自立しているため。また、ただでさえ、本症例は自宅で座って過ごす時間が長いため、さらなる活動量の低下をきたしてしまう。

 

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