第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前61~65】

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61 自然流産を連続( )回以上繰り返した状態を習慣流産という。
 ( )に当てはまるのはどれか。

 1.2
 2.3
 3.4
 4.5

解答

解説

用語の定義

・流産とは、日本産科婦人科学会は、「妊娠22週未満の胎児が母体から娩出されること」と定義している。妊娠22週以降の場合の死亡胎児の出産は死産と定義。つまり、何らかの原因で胎児が亡くなってしまい妊娠が継続しなくなることである。日本産科婦人科学会の定義ではさらに、妊娠12週未満の「流産」を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満の「流産」を「後期流産」としている。妊娠12週未満の早い時期での流産が多く、流産全体の約90%を占める。
・習慣流産とは、流産を3回以上繰り返した場合をいう。(死産や早期新生児死亡は含めない)。出産歴がない原発習慣流産と、出産後に流産を繰り返す続発習慣流産がある。続発習慣流産は、胎児染色体異常(赤ちゃんの染色体異常)による場合が多く、明らかな原因は見つかりにくい傾向がある。
・反復流産とは、流産を2回以上繰り返した場合をいう。最近、反復流産も原因精査の対象と考えられるようになってきた。

(※参考:「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」より)

自然流産を連続(3)回以上繰り返した状態を習慣流産という。したがって、選択肢2.3が ( )に当てはまる。

 

 

 

 

 

62 正常新生児の卵円孔の機能的閉鎖に関する説明で正しいのはどれか。

 1.動脈血酸素分圧〈PaO2〉の上昇によって閉鎖する。
 2.肺血流の増加によって起こる。
 3.出生から数週後に閉鎖する。
 4.動脈管の閉鎖が要因となる。

解答

解説

(※図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

卵円孔とは?

卵円孔とは、胎児期の心臓に存在する穴のことで、右心房と左心房の間の壁(心房中隔)の中央に組織が重なり合うようにできた穴のことである。胎児期は肺が機能していないため、左心房と右心房を卵円孔がつなぐことで、血液の循環が行われる。つまり、母体から供給される酸素を多く含んだ血液を胎児の全身に循環させるためにある。

通常は出生後、肺機能の活動開始および呼吸の開始と共に卵円孔は自然に閉鎖する。しかし、約20%の確率で卵円孔が5mmほど開いたままの状態となり、これを卵円孔開存と呼ぶ。一方で、胎児期に卵円孔が閉鎖することもあり、この場合を卵円孔早期閉鎖と呼ぶ。

 1.× 動脈血酸素分圧〈PaO2〉の上昇によって閉鎖するのは、動脈管(ボタロー管)である。動脈管(ボタロー管)は、胎児期において肺動脈と大動脈とを繋ぐ血管であり、胎児循環において静脈管(胎盤からの静脈血を大静脈に送り込む静脈)、卵円孔とともに重要な役割を果たす。
 2.〇 正しい。肺血流の増加によって起こる。卵円孔の機能的閉鎖の一因は、肺からの静脈還流量の増大によって左房圧が上昇し、左房と右房との圧力差が減少することで起こる。
 3.× 出生から「数週後」ではなく数日には閉鎖する。
 4.× 動脈管(ボタロー管)の閉鎖が要因「ではない」。

胎児循環とは?

胎児循環とは、胎児における血液の流れ方のことで、肺のかわりを胎盤が果たす胎盤循環が主体である。胎児の下腹部で大動脈から出た左右の臍動脈は、胎盤で母体の血液とガス交換および栄養分・老廃物交換を行った後、1本の臍静脈として胎児体内に戻る。その後肝臓を通じ、あるいは静脈管を通って下大静脈から右心房に入る。この血液と上大静脈から右心房に入った血液の大部分は、心房中隔にあいている卵円孔を通じて直接左心房に移り、左心室から大動脈に出る。一部の右心房から右心室に入った血液は、肺動脈に出るが、肺がまだ活動していないので、その主体は動脈管を通じて大動脈に流入する。

 

 

 

 

 

63 自殺対策基本法について正しいのはどれか。

 1.自殺対策強化月間を設けることを定めている。
 2.国の責務としてゲートキーパーの養成を定めている。
 3.民間団体による地域自殺対策推進センターの設置を定めている。
 4.事業主が職場のハラスメントの防止に必要な措置を講じることを義務付けている。

解答

解説

自殺対策基本法とは?

自殺対策基本法は、①自殺の防止と②自殺者の親族などの支援の充実を図り、国民が健康で生きがいをもって暮らすことのできる社会の実現を目的としている。年間の日本における自殺者数が3万人を超えていた日本の状況に対処するため制定された法律である。2006年6月21日に公布、同年10月28日に施行された。主として厚生労働省が所管し、同省に特別の機関として設置される自殺総合対策会議が、「自殺対策の大綱」を定める。

 1.〇 正しい。自殺対策強化月間を設けることを定めている。これは、自殺対策基本法の第七条(自殺予防週間及び自殺対策強化月間)において、「国民の間に広く自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるとともに、自殺対策の総合的な推進に資するため、自殺予防週間及び自殺対策強化月間を設ける。2 自殺予防週間は九月十日から九月十六日までとし、自殺対策強化月間は三月とする」と規定されている(※引用:「自殺対策基本法」e-GOV法令検索様より)。
 2.× 「国」ではなく市町村の責務としてゲートキーパーの養成を定めている。 ほかにも、保健福祉事務所・センター(保健所)、精神保健福祉センター、県がん・疾病対策課等が養成の役割を担っている。ゲートキーパーの養成は、自殺総合対策大綱に含まれ、自殺総合対策における当面の重点施策である。ちなみに、ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことをいう。つまり、「命の門番」とも位置付けられる人のことである。
 3.× 民間団体による地域自殺対策推進センターの設置を定めているのは、「地域自殺対策推進センター運営事業実施要綱」である。地域自殺対策推進センターとは、全国47都道府県と20指定都市に設置されており、管内のエリアマネージャーとして、市区町村の地域自殺対策計画の策定・進捗管理、検証などを支援する。
 4.× 事業主が職場のハラスメントの防止に必要な措置を講じることを義務付けているのは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」である。ハラスメントとは、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」などの迷惑行為を指す。 具体的には、属性や人格に関する言動などによって相手に不快感や不利益を与え、尊厳を傷つけることである。社会問題化され、令和元(2019)年改正の「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)」では、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動に起因する問題(パワーハラスメント)について事業主は雇用管理上必要な措置を講じなればならないとされた。

 

 

 

 

 

64 患者とその家族や医療者が患者にとって望ましい治療を探り、お互いが納得する治療を選択できるようにしていくのはどれか。

 1.心理教育
 2.共同意思決定
 3.ストレングス
 4.アドヒアランス

解答

解説
 1.× 心理教育とは、症状の理解や服薬の必要性の理解など、病識の獲得と治療方法への理解が中心に行われる。ちなみに、家族心理教育とは、家族が病気を正しく理解し、適切な対応や望ましい接し方を身につけることを目的とする。病気による行動特性を理解し、症状に対する適切な対応と接し方を学ぶことができ、治療効果の増進・再発防止にもつながる。
 2.〇 正しい。共同意思決定は、患者とその家族や医療者が患者にとって望ましい治療を探り、お互いが納得する治療を選択できるようにしていくものである。共同意思決定とは、患者やサービスの利用者と医療やケア専門職が協力して意思決定を行うプロセスである。患者と専門職は、治療の目標や希望、治療における役割などについて話し合い、適切な治療を見つけ出す。
 3.× ストレングスとは、その人本来の「強さ」に重点を置く考え方である。通常の医療モデルがいわば患者の弱さに着目しているのと対照的に、ストレングスモデルでは患者の性格・技能・環境・関心など患者がもつ良い点、すなわち「強み(ストレングス)」に注目してそれを伸ばし、回復に向かわせるような取り組みを行う。
 4.× アドヒアランスとは、医療現場で患者が治療方針の決定に賛同し、積極的に治療を受けることを意味する言葉である。コンプライアンスとは、医療者からの指示を患者が遵守することを指す。似たような言葉であるが、アドヒアランスは、患者が賛同、つまり能動的に治療を受けることを指す。

 

 

 

 

 

65 Aさん(30歳、男性)は、昼間の過剰な眠気を主訴に来院した。会社の会議ではいつも寝てしまい、居眠り運転で交通事故を起こしたこともある。笑ったときに脱力してしまうことや、入眠時に誰もいないのに人影が見えたり、睡眠と覚醒の移行期に体を動かせなくなることがある。
 最も考えられる疾患はどれか。

 1.ナルコレプシー
 2.レム睡眠行動障害
 3.睡眠時無呼吸症候群
 4.レストレスレッグス症候群〈むずむず脚症候群〉

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(30歳、男性)
・主訴:昼間の過剰な眠気
・会社の会議ではいつも寝てしまい、居眠り運転で交通事故を起こす。
・笑ったときに脱力してしまう(情動脱力発作:カタプレキシー)。
・入眠時に誰もいないのに人影が見える(悪夢)。
・睡眠と覚醒の移行期に体を動かせなくなることがある(金縛り)。
→①昼間の過剰な眠気、②情動脱力発作、③悪夢、④金縛りの特徴的な症状から答えを導きだそう。

 1.〇 正しい。ナルコレプシーが最も考えられる。ナルコレプシーとは、日中に突然起こる強い眠気が特徴の脳疾患(睡眠障害)である。怒りや笑いなどの感情が誘因となって起こる情動脱力発作(カタプレキシー)が出現することが多い。入眠時はレム睡眠となるため、入眠時の金縛り(意識はあるが抗重力筋の活動が著しく低下するため動けない)、睡眠の断片化による中途覚醒やリアルな悪夢のためうなされることも多い。
 2.× レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。基礎疾患として、脳幹部の脳腫瘍、パーキンソン病、オリーブ橋小脳萎縮症、レヴィー小体病などいくつかの原因が考えられている。しかしながら、約半数は基礎疾患を持たず、原因不明である。
 3.× 睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に無呼吸が繰り返され、睡眠の分断化、睡眠の減少により日中過度の眠気などを伴う病態である。医学的には、10秒以上の気流停止を無呼吸とし、無呼吸が一晩に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上を診断基準とすることが多い。
 4.× レストレスレッグス症候群〈むずむず脚症候群、下肢静止不能症候群〉は、身体末端の不快感(むずむず感)や痛みによって特徴づけられた慢性的な病態である。入眠時にむずむず感が生じると、それを軽減するために下肢を絶え間なく動かすために入眠が障害される。

 

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