第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前66~70】

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66 Aさん(43歳、男性)は統合失調症で通院していたが、服薬中断によって幻覚妄想状態が続いていた。ある日、Aさんの父親に対する被害妄想が強くなり、父親へ殴りかかろうとしたところを母親に制止された。その後、Aさんは母親に促されて精神科病院を受診し「薬は飲みたくないけど、父親が嫌がらせをするので、すぐに入院して家から離れたい」と訴えた。母親も入院治療を強く希望している。
 Aさんの入院形態はどれか。

 1.応急入院
 2.措置入院
 3.任意入院
 4.医療保護入院

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(43歳、男性、統合失調症)
・服薬中断によって幻覚妄想状態が続いていた。
・被害妄想が強くなり、父親へ殴りかかろうとした。
・Aさん「薬は飲みたくないけど、父親が嫌がらせをするので、すぐに入院して家から離れたい」と。
・母親も入院治療を強く希望している。
本人・母親とも入院の希望がある。まずは、任意入院が優先される。精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の第二十条(任意入院)において、「精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない」と規定されている(※引用:「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)。

 1.× 応急入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない。②精神保健指定医の診察:1人の診察。③そのほか:医療および保護の依頼があるが、家族等の同意が得られない。④備考:入院期間は72時間以内。入院後直ちに知事に届け出る。知事指定の病院に限る。⑤入院権限:精神科病院管理者
 2.× 措置入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない。②精神保健指定医の診察:2人以上の診察、③そのほか:自傷・他害のおそれがある。④備考:国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る。⑤入院権限:都道府県知事である。
 3.〇 正しい。任意入院がAさんの入院形態である。任意入院とは、①患者本人の同意:必要。②精神保健指定医の診察:必要なし。③そのほか:書面による本人意思の確認。④備考:本人の申し出があれば退院可能。⑤精神保健指定医が必要と認めれば、72時間以内の退院制限が可能。⑥入院権限:精神科病院管理者。
 4.× 医療保護入院とは、①患者本人の同意:必ずしも必要としない、②精神保健指定医の診察:1人の診察、③そのほか:家族等のうち、いずれかの者の同意、④備考:入院後、退院後ともに10日以内に知事に届け出る、⑤入院権限:精神科病院管理者である。

入院の形態

①任意入院:患者本人の同意:必要。精神保健指定医の診察:必要なし。そのほか:書面による本人意思の確認。備考:本人の申し出があれば退院可能。精神保健指定医が必要と認めれば、72時間以内の退院制限が可能。入院権限:精神科病院管理者。

②医療保護入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察。そのほか:家族等のうち、いずれかの者の同意。備考:入院後、退院後ともに10日以内に知事に届け出る。入院権限:精神科病院管理者

③応急入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察。そのほか:医療および保護の依頼があるが、家族等の同意が得られない。備考:入院期間は72時間以内。入院後直ちに知事に届け出る。知事指定の病院に限る。入院権限:精神科病院管理者

④措置入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:2人以上の診察、そのほか:自傷・他害のおそれがある。備考:国立・都道府県立精神科病院または指定病院に限る。入院権限:都道府県知事

⑤緊急措置入院:患者本人の同意:必ずしも必要としない。精神保健指定医の診察:1人の診察、そのほか:自傷・他害のおそれが著しく、急を要する。備考:入院期間は72時間以内。指定医が1人しか確保できず時間的余裕がない場合、暫定的に適用される。入院権限:都道府県知事

 

 

 

 

 

67 Aさん(55歳、男性)は筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉で、経口摂取と胃瘻による経管栄養を併用し、在宅療養することになった。
 Aさんと家族介護者への指導内容で適切なのはどれか。

 1.水分は経口による摂取とする。
 2.経口摂取中は頸部前屈位とする。
 3.経管栄養剤以外の注入を禁止する。
 4.注入時間に合わせて生活パターンを変更する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(55歳、男性、筋萎縮性側索硬化症
・在宅療養:経口摂取胃瘻による経管栄養を併用。
→筋萎縮性側索硬化症では、顔面や舌の萎縮、筋力の低下によって、舌で食べ物を送り込んだり、うまくかむことが難しくなる。嚥下障害が進行すると、誤嚥しやすくなるため、誤嚥リスクを減らした日常生活指導が必要となる。

 1.× あえて、水分は経口による摂取とする必要はない。なぜなら、水分のようにサラサラした液体は咽頭部を急速に流れ誤嚥しやすいため。本症例のように、経口摂取と胃瘻による経管栄養を併用している場合は、胃ろうから水分摂取をしたり、経口の水分摂取もとろみをつけることが多い。
 2.〇 正しい。経口摂取中は頸部前屈位とする。なぜなら、頸部屈曲位(前屈位)、姿勢は30° リクライニング位は、嚥下予防となるため。ちなみに、頸部伸展位(後屈位)は、嚥下反射を遅延させる。なぜなら、頚部伸展位では、喉頭が開き咽頭と気道が直線状となり誤嚥の危険性が増すため。
 3.× あえて、経管栄養剤以外の注入を禁止する必要はない。なぜなら、栄養剤のほかにも水分摂取のため注入するため。ただし、医師から特別に指示が出ていることもあるので独断で判断しないよう注意する。
 4.× あえて、注入時間に合わせて生活パターンを変更する必要はない。逆に、注入時間によって、生活パターンを変更すると、生活リズム(睡眠など)が崩れるため。生活パターンに配慮して、注入時間を設定することが多い。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

68 令和元年(2019年)の介護サービス施設・事業所調査において、介護保険制度による訪問看護の利用者の特徴で正しいのはどれか。

 1.要介護5の利用者が最も多い。
 2.傷病別では悪性新生物が最も多い。
 3.医療保険制度による利用者よりも多い。
 4.要支援1、2の利用者は全体の利用者の4割を占める。

解答

解説
 1.× 「要介護5」ではなく要介護2の利用者が最も多い。要介護2,1,3,4,5,要支援2,1の順となっている。要介護4,5となってくると施設入所が多くなってくるため。
 2.× 傷病別では、「悪性新生物」ではなく脳血管疾患が最も多い。脳血管疾患を呈すると身体機能が一気に落ちやすく訪問看護が必要になることが多いため。
 3.〇 正しい。医療保険制度による利用者よりも多い。医療保険制度と介護保険制度による訪問看護の利用者を比較すると、約2倍介護保険制度が多い。これは、まずは介護保険制度が優先され、提供が困難な場合に医療保険制度を使用する制度となっているため。
 4.× 要支援1、2の利用者は全体の利用者の「4割」ではなく約1.5割を占める。要支援1は約5%(約0.5割)、要支援2は約10%(約1割)である。

(※引用データ:「令和元年 介護サービス施設・事業所調査」e-Stat統計でみる日本様HPより)

 

 

 

 

 

69 Aさん(82歳、女性、要介護1)は1人で暮らしている。認知症と診断され、週1回の訪問看護を利用することになった。訪問看護師は、Aさんが調理できなくなったので、配食サービスを導入したと介護支援専門員から情報を得た。初回訪問時に、Aさんは季節外れの服を着ており、今日の日付を答えられなかった。トイレで排泄できている。
 訪問看護師が収集した情報のうち、手段的日常生活動作〈IADL〉はどれか。

 1.調理ができない。
 2.季節外れの服を着ている。
 3.トイレで排泄できている。
 4.今日の日付を答えられない。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(82歳、女性、要介護1、1人暮らし、認知症)
・週1回の訪問看護を利用する。
・介護支援専門員から「Aさんが調理できなくなったので、配食サービスを導入した」。
・【初回訪問時】季節外れの服で、今日の日付を答えられない。トイレで排泄できている。
→手段的日常生活動作(IADL)とは、日常生活上の、より高度で複雑な動作のこと(買い物、洗濯、掃除、金銭管理、服薬管理など)である。
ADLは、①BADL(基本的日常生活動作)と、②IADL(手段的日常生活動作)に大別される。
①BADL:食事、排泄、入浴、整容など基本的な欲求を満たす身の回りの動作。
②IADL:買い物、洗濯、電話、服薬管理などの道具を用いる複雑な動作。

 1.〇 正しい。調理ができないのは、訪問看護師が収集した情報のうち、手段的日常生活動作〈IADL〉である。なぜなら、介護支援専門員から「Aさんが調理できなくなったので、配食サービスを導入した」という報告を受けているため。
 2.× 季節外れの服を着ているのは、BADLの更衣の評価項目である。
 3.× トイレで排泄できているのは、BADLの排泄の評価項目である。
 4.× 今日の日付を答えられないのは、見当識の評価項目で日常生活動作とはいえない。

BIの評価項目

Barthel Indexとは、「できる日常生活動作」の評価である。評価項目は10項目(①食事、②椅子とベッド間の移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥移動、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便コントロール、⑩排尿コントロール)あり、100点満点で評価される。

 

 

 

 

 

70 Aさん(90歳、男性)は要介護3となり、長男(60歳)と同居することになった。長男は「親を介護することがこんなに大変だとは思わなかった。親が衰えてつらいと感じるのは自分だけだろうか」と訪問看護師に話した。
 訪問看護師の対応で最も適切なのはどれか。

 1.高齢者の介護方法について説明する。
 2.訪問看護の時間中に長男に外出を促す。
 3.Aさんの短期入所サービスの利用を勧める。
 4.親の介護をしている介護者の了解を得て長男に紹介する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(90歳、男性、要介護3
・長男(60歳)と同居する。
・長男「親を介護することがこんなに大変だとは思わなかった。親が衰えてつらいと感じるのは自分だけだろうか」と。
→長男の親に対する介護の精神的な負担が疑える。「親の衰え」が主訴として聞かれる。

 1.× 高齢者の介護方法について説明する優先度は低い。なぜなら、「親の衰え」が主訴として聞かれるため。
 2.× 訪問看護の時間中に長男に外出を促す優先度は低い。なぜなら、必ずしも外出が精神的負担の改善につながるとはいえないため。長男の話を傾聴し、受容することが大切である。
 3.× Aさんの短期入所サービスの利用を勧める優先度は低い。なぜなら、Aさんは要介護3であるが、Aさんと長男が短期入所サービスの希望があるか、その必要性の評価もまだであるため。また、現時点では、長男の親に対する介護の精神的な負担の軽減が望まれる。ちなみに、短期入所生活介護とは、利用者が可能な限り自己の生活している居宅において、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるように、利用者に短期間入所してもらい、入浴、排泄、食事などの介護や日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービスである。
 4.〇 正しい。親の介護をしている介護者の了解を得て長男に紹介する。なぜなら、長男は介護の精神的な負担に加え、「自分だけだろうか」と孤独感も感じているため。介護者の話を聞くことで、その悩みを話せ、負担の軽減が行える可能性が高い。

 

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