第114回(R7) 看護師国家試験 解説【午前41~45】

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41 一次救命処置〈BLS〉で回復体位はどれか。

解答

解説

(※画像引用:日本ACLS協会ガイド様HPより「BLSとは?」)

一時救命処置(BLS)とは?

一時救命処置(BLS)とは、Basic Life Supportの略称で、心肺停止または呼吸停止に対する一次救命処置のことである。正しい知識と適切な処置の仕方さえ知っていれば誰でも行うことができる。

1.周囲の安全を確認
救助者の安全を最優先し、二次災害を防ぐためにまずは周囲の安全を確認する。

2.緊急通報とAEDを要請
大声で叫んで助けを呼ぶなど、周囲の人に119番通報とAEDの手配を頼む。  

3.呼吸を確認
普通の呼吸が確認できたら、回復体位(横向き)にして救急車を待つ。
呼吸をしていない、もしくは正常な呼吸でない場合はCPRを開始する。

4.CPR(心肺蘇生法)を開始
胸骨圧迫からはじめる。人工呼吸ができるようなら行うが、胸骨圧迫のみでも構わない。 

5.(AEDが入手できた場合)AEDで解析する

1.× 背臥位である。意識がない場合に舌が喉に落ち込み、気道閉塞(窒息)を起こす可能性がる。

2.〇 正しい。一次救命処置〈BLS〉で回復体位である。回復体位とは、救急医療などの現場において、意識はないが、呼吸と循環が維持されている傷病者がとる体位である。回復体位は吐物を口の中から取り除きやすく、窒息防止に有効である。

3.× ショック体位である。ショック体位とは、ショック症状がある場合に仰向けの状態で下肢を15~30cm挙上する体位のことである。 静脈還流量を増やすことが期待できる。

4.× 半坐位(ファーラー位)である。腰の負担軽減や呼吸困難の人に使う体位で用いられる。

 

 

 

 

 

42 上部消化管内視鏡検査で適切なのはどれか。

1.検査前日の就寝前に緩下薬を内服する。
2.検査の12時間前から禁食とする。
3.検査時の体位は右側臥位とする。
4.終了直後から飲食は可能である。

解答

解説

上部消化管内視鏡とは?

上部消化管内視鏡とは、一般に消化器科にて用いられる内視鏡もしくは検査・治療手技のこと。食道、胃、十二指腸までの上部消化管を観察する。主な適応疾患として①逆流性食道炎、②胃炎(ピロリ菌未感染、ピロリ菌現感染、ピロリ菌既感染・除菌後)、③胃ポリープ、④十二指腸潰瘍、⑤食道がんなどである。

1.× 検査前日の就寝前に緩下薬を内服するのは、「下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)」である。上部消化管内視鏡検査は食道、胃、十二指腸を観察するものであり、これらの臓器は食物摂取を控えることで消化管内容物がなくなり観察可能となる。

2.〇 正しい。検査の12時間前から禁食とする。なぜなら、上部消化管内視鏡検査では、胃の中に食べ物や消化液が残っていると、正確な観察ができないため。また、検査中に嘔吐するリスクや、嘔吐物が気管に入り込む誤嚥のリスクを高める可能性がある。したがって、前日タ食後から絶飲食とすることが多い。

3.× 検査時の体位は、「右側臥位」ではなく左側臥位とする。なぜなら、左側臥位の利点として、仰向けで行う時に比べて唾液を誤嚥しにくく、胃の大弯に胃液が溜まることで、胃からの逆流が起こりにくいため。

4.× 飲食が可能となるのは、「終了直後から」ではなく1時間以降からである。なぜなら、咽頭麻酔が残存し効いていると、誤嚥しやすいため。

 

 

 

 

 

43 成年後見制度で正しいのはどれか。

1.地域生活支援事業の1つとして位置付けられる。
2.後見の対象者は大体のことを自分で判断できる者である。
3.審判を受けるための申し立て先は社会福祉協議会である。
4.法定後見制度とは判断能力の低下に備えあらかじめ後見人を決めておくことである。

解答

解説

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、判断能力がないまたは不十分な者に対して、保護者を付すことにより契約などの法律行為を補助するものである。①法定後見制度と②任意後見制度とがある。

①法定後見制度:認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分な方に対して、本人の権利を法律的に支援、保護するための制度である。本人の判断能力の程度に応じて、後見・保佐・補助の3類型がある。

②任意後見制度:まだしっかりと自分で判断ができるうちに、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を誰にするか、将来の財産管理や身の回りのことについてその人に何を支援してもらうか、自分で決めておくことができる仕組みである。

1.〇 正しい。地域生活支援事業の1つとして位置付けられる
・地域生活支援事業とは、『障害者総合支援法』に定められるサービスである。相談支援、移動支援、コミユニケーション支援、地域活動支援センターや福祉ホームの運営、日常生活用具の給付・貸与などが行われる。障害者及び障害児が基本的人権を享受する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、市町村等が実施主体となり、地域の特性や利用者の状況に応じ、柔軟な形態により計画的に実施する事業である(※参考:「地域生活支援事業」厚生労働省HPより)。

2.× 後見の対象者は、「大体のことを自分で判断できる者」ではなく判断能力が不十分な方である。判断能力が不十分な方に対し、財産管理や日常生活における契約行為などが困難な方々を保護し、支援することを目的としている。

3.× 審判を受けるための申し立て先は、「社会福祉協議会」ではなく家庭裁判所である。なぜなら、個人の権利や財産に関わる重要な決定が必要で、公正な判断が求められるため。
・社会福祉協議会とは、地域の実情に応じた住民の福祉の増進を目的とする民間の自主的団体である。高齢者を対象にすることが多い。主な活動として、ボランティア団体の支援やボランティア活動に関する相談、情報提供だけでなく、全国の福祉関係者や福祉施設等事業者の連絡・調整や、社会福祉のさまざまな制度改善に向けた取り組みなども行っている。

4.× 判断能力の低下に備えあらかじめ後見人を決めておくことであるのは、「法定後見制度」ではなく任意後見制度である。法定後見制度では、本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助の3つの類型が設けられる。

成年後見人、保佐人、補助人との違い

①成年後見人:【開始要件】事理弁識能力を欠く常況にあること、【代理権】あり、【同意権】代理権でカバー、【取消権】あり(日常生活に関する法律行為を除く)、【資格制限】あり

②保佐人:【開始要件】事理弁識能力が著しく不十分なこと、【代理権】原則なし(審判によって付与)、【同意権】一部あり、【取消権】一部あり、【資格制限】あり

③補助人:【開始要件】事理弁識能力、【代理権】原則なし、【同意権】原則なし、【取消権】原則なし、【資格制限】あり

 

 

 

 

 

44 要介護認定者であっても、訪問看護が医療保険で提供される疾患はどれか。

1.糖尿病
2.認知症
3.脳梗塞
4.多発性硬化症

解答

解説

訪問看護とは?

訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。

訪問看護の指示書には、①訪問看護指示書、②特別訪問看護指示書、③精神科訪問看護指示書などがある。

②特別訪問看護指示書とは、「厚生労働大臣が定める疾病等」の療養者や指定された医療処置・管理が必要であると主治医が認める者などに交付される。医療保険が適用され、交付は原則として月1回まで、有効期間は14日である。

③精神科訪問看護指示書とは、精神疾患のある利用者とその家族を対象とし、地域や家庭で療養上の援助・指導が必要であると主治医が認める場合に交付される。有効期間は6か月以内で、介護保険対象者であっても医療保険によるサービス提供となる。

1.× 糖尿病は、要介護認定者が医療保険で訪問看護を受けられる「厚生労働大臣が定める疾病等」には含まれない
・1型糖尿病とは、原因が自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる糖尿病である。小児~思春期の発症が多く、肥満とは関係ないのが特徴である。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。

2.× 認知症は、要介護認定者が医療保険で訪問看護を受けられる「厚生労働大臣が定める疾病等」には含まれない
・認知症とは、さまざまな原因で脳の神経細胞が破壊・減少し、日常生活が正常に送れない状態になることをいう。

3.× 脳梗塞は、要介護認定者が医療保険で訪問看護を受けられる「厚生労働大臣が定める疾病等」には含まれない
・脳梗塞とは、何らかの原因で脳の動脈が閉塞し、血液がいかなくなって脳が壊死してしまう病気である。どの動脈による閉鎖なのかによって、症状は異なるが、片方の手足の麻痺やしびれ、呂律が回らない、言葉が出てこない、視野が欠ける、めまい、意識障害など様々な症状が出現する。

4.〇 正しい。多発性硬化症は、要介護認定者であっても、訪問看護が医療保険で提供される疾患である。なぜなら、多発性硬化症は、「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当するため(※下参照)。
・多発性硬化症とは、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)。

厚生労働大臣が定める疾病等

末期の悪性腫瘍
多発性硬化症
重症筋無力症
スモン
筋萎縮性側索硬化症
脊髄小脳変性症
ハンチントン病
進行性筋ジストロフィー症
パーキンソン病関連疾患・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)
多系統萎縮症・線条体黒質変性症・オリーブ橋小脳萎縮症・シャイ・ドレーガー症候群
プリオン病
亜急性硬化性全脳炎
ライソゾーム病
副腎白質ジストロフィー
脊髄性筋萎縮症
球脊髄性筋萎縮症
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
後天性免疫不全症候群
頸髄損傷
人工呼吸器を使用している状態

 

 

 

 

 

45 Aさん(78歳、女性)は認知症があり、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅰである。1人で暮らしており、かかりつけの医師から処方された複数の内服薬を1日3回服用している。嚥下障害はない。Aさんは「薬がたくさんあって、余る薬もあるのよ」と訪問看護師に話した。
 このときの服薬管理で適切なのはどれか。

1.内服薬を一包化する。
2.薬剤の形状を変更する。
3.訪問看護師の訪問時に内服する。
4.複数の内服薬を1つの箱にまとめて保管する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(78歳、女性、認知症
・認知症高齢者の日常生活自立度判定基準Ⅰ
・1人暮らし、複数の内服薬を1日3回服用。
・嚥下障害はない。
・Aさんは「薬がたくさんあって、余る薬もあるのよ」と。
→Aさんの訴えから、複数の薬を決められた通りに服用することに困難さがあることが示唆される。

1.〇 正しい。内服薬を一包化する。なぜなら、薬を一包化することで、1回に服用する薬が1つの袋にまとめられ、服用すべき量が視覚的に分かりやすくなり、飲み間違いや飲み忘れ、飲み残しを防ぐ効果が期待できるため。

2.× 薬剤の形状を変更する必要はない。なぜなら、Aさんは「嚥下障害はない」と明記されているため。薬剤の形状変更(例:錠剤から粉薬、液剤への変更)は、主に嚥下障害がある場合や、錠剤を飲むのが苦手な場合に検討される方法である。

3.× 訪問看護師の訪問時に内服する必要はない。なぜなら、訪問看護師が1日3回のすべての服薬タイミングに合わせて訪問することは、時間的・経済的に現実的ではないため。また、Aさんの日常生活自立度が「Ⅰ」であることから、ある程度の自立は可能であり、自立を促す支援が重要である。毎日訪問看護師が立ち会わなければ薬が飲めない状況を作ることは、Aさんの残存能力の活用を妨げることにもなりかねない。

4.× 複数の内服薬を1つの箱にまとめて保管する必要はない。なぜなら、複数の薬を無造作に1つの箱に入れるだけでは、どの薬をいつ飲むべきかという情報がさらに曖昧になり、かえって混乱を招き、飲み間違いや飲み忘れのリスクを高めるため。

(※図:認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランク)

 

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