第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前76~80】

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76 後天性の大動脈弁狭窄症について正しいのはどれか。

1.二尖弁が多い。
2.弁尖の石灰化による。
3.左室壁は徐々に薄くなる。
4.拡張期に心雑音を聴取する。
5.心筋の酸素需要は減少する。

解答2

解説

(図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

大動脈弁狭窄とは?

大動脈弁狭窄とは、全身に血液を送り出す左心室の出口が狭い状態をいう。①先天性と②後天性に分けられる。①先天性:生まれたときからずっと狭い場合である。②後天性:もともとは狭くなかった弁が年齢とともに動脈硬化が進んで、弁のひらひらが堅くなったりして狭くなった場合である。大動脈弁狭窄症の原因は①加齢性、②リウマチ性、③先天性二尖弁(正常に比べ比較的若年で石灰化が起こりやすい)などがあり、これらのなかで頻度は加齢性が最も高い。

1.× 大動脈弁は、正常では「二尖」ではなく三尖が多い。後天性とは、もともとは狭くなかった弁が年齢とともに動脈硬化が進んで、弁のひらひらが堅くなったりして狭くなった場合である。正常では、右房室弁や大動脈弁、肺動脈弁が三尖弁であり、唯一の二尖弁が僧帽弁である。大動脈弁がもとから「二尖」であれば先天性大動脈弁狭窄といえる。
2.〇 正しい。後天性の大動脈弁狭窄症は弁尖の石灰化による。後天性の大動脈弁狭窄症は高齢者に多く、長年動き続けて物理的ストレスにさらされた大動脈弁に炎症や脂肪の沈着が起こり石灰化することにより起こる。後天性の大動脈弁狭窄症の多くは大動脈弁尖の動脈硬化性変性(加齢性変性)であり石灰化を伴う。
3.× 左室壁は、徐々に「薄くなる」のではなく厚くなる。なぜなら、左室から大動脈に駆出する際に狭窄があるため。つまり、左室に圧負荷がかかるため、徐々に左室壁は肥大する。ちなみに、心臓の筋肉が薄くなり、拡張して収縮力が低下する病気は拡張型心筋症である。
4.× 心雑音を聴取できるのは、「拡張期」ではなく、収縮期(駆出性)である。なぜなら、血液が大動脈に送り出される(駆出される)収縮期に、通過障害により血流のジェット(乱流)が生じるため。これを収縮期駆出雑音という。音は、だんだん大きくなったあと次第に小さくなり、狭窄が進めば進むほど音が大きくなる。
5.× 心筋の酸素需要は、「減少する」のではなく増加する。なぜなら、左室が駆出する際に圧負荷がかかり、多くのエネルギー(酸素)を要するため。ちなみに、心筋の酸素需要は心筋梗塞など冠動脈に病変が存在し冠血流量が十分に増加しないときに減少する。

 

 

 

 

 

 

77 褐色細胞腫でみられるのはどれか。

1.高血糖
2.中心性肥満
3.満月様顔貌
4.血清カリウム濃度の低下
5.副腎皮質ホルモンの産生の亢進

解答1

解説

褐色細胞腫とは?

褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。

1.〇 正しい。高血糖は、褐色細胞腫でみられる。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、交感神経優位となり、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。
2.× 中心性肥満は、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の特徴的症候のひとつである。中心性肥満とは、コルチゾールの過剰症状による体幹の肥満である。
3.× 満月様顔貌は、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の特徴的症候のひとつである。満月様顔貌(ムーンフェイス)は顔に脂肪が沈着して丸くなった状態である。
4.× 血清カリウム濃度の低下は、嘔吐・下痢・副腎の病気(アルドステロンの過剰分泌)・利尿薬が原因で生じる。カリウムの低下は、筋力低下・筋肉のけいれんやひきつり・麻痺・不整脈などを起こす。血清カリウム濃度の低下は、副腎皮質ホルモンであるアルドステロンの過剰(副腎の病気)によって起こる。アルドステロンには、ナトリウムの再吸収、カリウムの排泄を促し、血圧を上昇させる働きがある。過剰になると、カリウムの尿中への排泄がますます促進され、血清カリウム濃度も低下する。
5.× 「副腎皮質ホルモン」の産生の亢進ではなく、交感神経に働きかけるカテコラミンの増加(副腎髄質ホルモンの産生の亢進)である。副腎皮質ホルモンに影響を及ぼさない。副腎皮質は、①コルチゾール、②アルドステロン、③性ホルモンを分泌する。ちなみに、コルチゾールなど副腎皮質ホルモンの過剰産生を引き起こすのはクッシング症候群である。

 

 

 

 

78 Guillain-Barré〈ギラン・バレー〉症候群で正しいのはどれか。

1.若年者に多い。
2.遺伝性疾患である。
3.骨格筋に病因がある。
4.症状に日内変動がある。
5.抗ガングリオシド抗体が出現する。

解答5

解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.△ 「若年者(15歳から34歳まで)」に多いとは断定できない。ただし、発症年齢は20代から30代をピークとして、幼小児期から90歳代まで分布することが示されている(※参考:「ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。
2.× 「遺伝性疾患」ではなく、ウイルスや細菌の感染が原因で末梢神経を攻撃してしまう自己免疫性疾患である。ただし、原因は完全には解明されていない。 7割で先行感染がみられ、病態の引き金となる。約6割で急性期に糖脂質に対する抗体がみられる。ちなみに、遺伝疾患とは、遺伝子が原因となり発症する病気のことである。代表的なものにダウン症候群やターナー症候群・フェニルケトン尿症などがある。
3.× 病因は、「骨格筋」ではなく、「運動神経、感覚神経、自律神経を含む末梢神経障害」である。運動ニューロンが障害されることで筋力低下が生じる。また、しびれや痛み、脱力などの症状がみられる。上位運動ニューロンとは、大脳皮質から内包、脳幹、脊髄を経て脊髄前角細胞に至る経路のことである。下位運動ニューロンとは、脊髄前角細胞から末梢部で筋に至るまでの経路のことである。
4.× 症状に日内変動はなく、発症の1~3週間前に風邪や下痢など感染症の症状が見られた後、数日から数週間の間に四肢の筋力低下、脱力感、しびれ、痛みなどの症状が現れる。治療を行わない場合、ピークに達する2~4週までは進行性に悪化する。日内変動を認める症状がある場合、重症筋無力症を疑う。
5.〇 抗ガングリオシド抗体が出現する。正しい。ギラン・バレー症候群の代表的な自己抗体の中に抗ガングリオシド抗体(抗GM1抗体がある。約60%に、末梢神経に発現する糖脂質(ガングリオシド)に対する自己抗体が出現する。

 

重症筋無力症とは?

 重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

 

79 生活保護法で実施される扶助は、生活扶助、介護扶助、住宅扶助、出産扶助を含めて( )種類である。
 ( )に入る数字はどれか。

1.5
2.6
3.7
4.8
5.9

解答4

解説

生活保護制度とは?

生活保護制度は、『日本国憲法』25条の理念に基づき、生活困窮者を対象に、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長することを目的としている。8つの扶助(生活扶助、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助)があり、原則現金給付であるが、医療扶助と介護扶助は現物給付である。被保護人員は約216.4万人(平成27年度,1か月平均)で過去最高となっている。

①生活扶助:日常生活に必要な費用
②住宅扶助:アパート等の家賃
③教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費
④医療扶助:医療サービスの費用
⑤介護扶助:介護サービスの費用
⑥出産扶助:出産費用
⑦生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
⑧葬祭扶助:葬祭費用

【生活保護法の4つの基本原理】
①国家責任の原理:法の目的を定めた最も根本的原理で、憲法第25条の生存権を実現する為、国がその責任を持って生活に困窮する国民の保護を行う。
②無差別平等の原理:全ての国民は、この法に定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った理由や社会的身分等に関わらず無差別平等に保護を受給できる。また、現時点の経済的状態に着目して保護が実施される。
③最低生活の原理:法で保障する最低生活水準について、健康で文化的な最低限度の生活を維持できるものを保障する。
④保護の補足性の原理:保護を受ける側、つまり国民に要請される原理で、各自が持てる能力や資産、他法や他施策といったあらゆるものを活用し、最善の努力をしても最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できる。

【4つの原則】
①申請保護の原則:保護を受けるためには必ず申請手続きを要し、本人や扶養義務者、親族等による申請に基づいて保護が開始。
②基準及び程度の原則:保護は最低限度の生活基準を超えない枠で行われ、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した要保護者の需要を基とし、その不足分を補う程度の保護が行われる。
③必要即応の原則:要保護者の年齢や性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して、有効且つ適切に行われる。
④世帯単位の原則:世帯を単位として保護の要否及び程度が定められる。また、特別な事情がある場合は世帯分離を行い個人を世帯の単位として定めることもできる。

(※参考:「生活保護制度」厚生労働省HPより)
(※参考:「生活保護法の基本原理と基本原則」室蘭市HPより)

 生活保護は①生活扶助②教育扶助③住宅扶助④医療扶助⑤介護扶助⑥出産扶助⑦生業扶助⑧葬祭扶助の8種類がある。よって、選択肢4.8が( )に入る数字として正しい。

 

 

 

 

80 カウンセリングの基本的態度で適切なのはどれか。

1.査定
2.指示
3.受容
4.同化
5.評価

解答3

解説

カウンセリングの基本的態度

ロジャーズの3原則とは、アメリカの心理学者であるカール・ロジャーズが提唱した「傾聴」の3つの構成要素を表すものである。

【ロジャーズ,C.Rの3原則】
①「共感的理解」:相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとすること
②「無条件の肯定的配慮」:相手の話を善悪の評価や好き嫌いの評価をせずに聴くこと
③「自己一致」:聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、真意を確認すること

1.× 査定とは、調べて価値を決めることである。傾聴して査定するのではなく、相手を肯定的に受容した態度がふさわしい。ロジャーズ,C.Rの3原則の②「無条件の肯定的配慮」に該当する。相手の話を善悪の評価や好き嫌いの評価をせずに聴くことが望ましい。
2.× 指示ではなく、①「共感的理解」が必要である。相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。したがって、指示的態度ではなく、親しみやすい関係性を築き、支持的態度が大切になる。
3.〇 正しい。受容は、カウンセリングの基本的態度である。カウンセリングとは、依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助のことである。受容とは、ありのままを受け入れることである。ありのままの自分を受容してもらえると、人は自己に対する価値や信頼感を取り戻すことができる。相談者自身の感じ方に焦点を当てて肯定的な関心を持つ受容的態度が大切である。
4.× 同化とは、相手と自分の区別がつかないほど、相手に飲み込まれてしまうことを指す。感情が怖いと思っている方の多くは、相手の気持ちと全く同一の気持ちになるべきだと思っているか、自分がなくなってしまうほど相手と一体化してしまう傾向にある。相談者の思いを同化してしまうとカウンセラーの精神的負担になるため控える。
5.× 評価は(アセスメント)は、価値を判断することである。評価や査定、考課、査定など意味が似ている言葉はあるがあまり大差ない。カウンセリングでは①「共感的理解」、②「無条件の肯定的配慮」、③「自己一致」が望ましい。

 

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