第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前51~55】

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51 高齢者の栄養管理について栄養サポートチーム<NST>と連携するときに、病棟看護師が行う看護活動で最も適切なのはどれか。

1.同時期に他のサポートチームが介入しないようにする。
2.栄養管理が不十分な高齢者のケアについて助言を得る。
3.家族にも栄養サポートチーム<NST>の一員になるよう勧める。
4.経管栄養法を行っている高齢者数を減らす方法を一緒に考える。

解答2

解説

NSTとは?

栄養サポートチームとは、NST:Nutrition Support Teamの略で、職種の壁を越え、栄養サポートを実施する多職種の集団である。医師・管理栄養士・看護師・薬剤師などの専門スタッフが連携し、患者の栄養状態を評価し、最良の栄養管理法を提案して、患者の回復や社会復帰などを促進することが目的である。

1.× 同時期に他のサポートチームが介入することもある。なぜなら、栄養に問題がある高齢者は、そのほかの問題(嚥下障害や皮膚障害、易感染など)併せ持っていることが多いため。他のサポートチーム(褥瘡チーム・緩和ケアチームなど)と連携を図りながら問題を解決していく必要がある。
2.〇 正しい。栄養管理が不十分な高齢者のケアについて助言を得る。栄養サポートチームとは、NST:Nutrition Support Teamの略で、職種の壁を越え、栄養サポートを実施する多職種の集団である。栄養管理が不十分な高齢者に、さまざまな専門職の視点から、ケアのあり方について助言を得る。
3.× 家族にも栄養サポートチーム<NST>の一員になるよう勧める必要はない。なぜなら、栄養サポートチーム<NST>は、専門スタッフから構成されているチームであるため。家族は、栄養管理法の教育の対象に位置づけられている。
4.× 経管栄養法を行っている高齢者数を減らす方法を一緒に考える必要はない。なぜなら、栄養サポートチーム<NST>の対象は、その患者に個別性を持ったふさわしい栄養管理法を提案することであるため。経管栄養法中の高齢者数を減らすことは、対象が大きすぎる。

経鼻経管栄養法とは?

経鼻経管栄養は、鼻の穴からチューブを挿入して胃や腸まで通し、栄養剤を注入する方法である。特別な手術が不要で、必要な栄養素を比較的容易に摂取することが可能である。胃食道逆流や誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こすリスクがあるため、短期間で口から栄養を摂れるまで回復すると見込まれる場合など、一時的な処置として行われる。

 

 

 

 

 

52 Aさん(102歳、女性)は、重度の廃用症候群のために5年前から発語が少なく体を動かすことができない。誤嚥性肺炎で入退院を繰り返し、終末期である。同居している家族は積極的な治療をしないことを希望し、自宅でAさんを看取ることを決めた。
 Aさんの家族への退院時の指導で最も適切なのはどれか。

1.「24時間付き添ってあげましょう」
2.「おむつの重さで尿量を測定しましょう」
3.「苦しそうになったら救急車を呼びましょう」
4.「Aさんが食べたければ食べさせてあげましょう」

解答4

解説

本症例のポイント

・Aさん(102歳、女性、重度の廃用症候群)
・5年前:発語が少なく体を動かすことができない。
終末期:誤嚥性肺炎による入退院を繰り返す。
・希望:同居している家族は積極的な治療をしないこと
・自宅でAさんを看取ることを決めた。
→終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。患者が可能な限り前向きに生活できるような支援体制を提供するという。従来、医療・介護の現場では、終末期における治療の開始・中止・変更の問題は重要な課題のひとつである。疾病の根治を目的とせず延命のみを目的とした対症療法を一般的に延命治療と称し、人工呼吸・人工栄養(経管栄養)、人工透析などが含まれる。しかし、終末期患者では意思疎通の困難な場合も多く、患者の意思に反する治療(延命)になりかねない。治療・ケア内容に関する患者や家族の意思や希望を病状などに応じて繰り返し確認し、それを患者・家族・医療者で共有し、方針を見いだすことが非常に重要である。

1.× 24時間の付き添うことは勧められない。なぜなら、24時間付き添うことは、家族の負担が大きすぎるため。できるだけ家族の機能や負担を考慮して、社会的な資源やサービスの使用を推奨するとよい。
2.× おむつの重さで尿量を測定することは勧められない。なぜなら、24時間付き添うことは、家族の負担が大きすぎるため。また、本症例の場合、積極的な治療を行わないことを決めており、尿測の意義は薄いと考えられる。
3.× 「苦しそうになったら救急車を呼びましょう」と一概に一方的に決められることではない。なぜなら、本症例の場合、自宅でAさんを看取ることを決めているため。救急車で病院に搬送された場合、見取り先が病院になる可能性が高い。
4.〇 正しい。「Aさんが食べたければ食べさせてあげましょう」と伝える。なぜなら、Aさんにとって最善であることをともに体験していく時間を過ごせるようにするため。ちなみに、終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。患者が可能な限り前向きに生活できるような支援体制を提供するという。従来、医療・介護の現場では、終末期における治療の開始・中止・変更の問題は重要な課題のひとつである。

 

 

 

 

 

53 Aちゃん(生後10か月、男児)は、先天性心疾患のため手術を受けた。Aちゃんの体重の変化を図に示す。
 手術後から現在までの体重の変化に対する評価で適切なのはどれか。

1.体重増加の不良
2.過度な体重増加
3.標準的な体重増加
4.キャッチアップ現象

解答4

解説

パーセンタイル値とは?

パーセンタイル値は、乳幼児の身長・体重・頭囲・胸囲について評価するための指標のひとつである。計測値を小さいものから大きいものへと順番に並べ、全体を100として何番目であるかを表したものである。10パーセンタイルから90パーセンタイルまでは正常範囲とされる。

1.× 体重増加の不良とはいえない。なぜなら、本症例は体重増加の不良は手術までであるため。手術前は3パーセンタイル未満であったものの、現在は50パーセンタイルまで体重増加している。
2.× 過度な体重増加とはいえない。なぜなら、現在は50パーセンタイル(中央値)であるため。
3.× 標準的な体重増加とはいえない。なぜなら、本症例は手術前まで体重増加の不良(3パーセンタイル未満)であるため。術前3パーセンタイル未満から手術後の体重の増加があり、標準的ではない。
4.〇 正しい。キャッチアップ現象である。なぜなら、本症例は先天性心疾患により体重増加不良(3パーセンタイル未満)だったが、術後は中央値である50パーセンタイルまで体重増加しているため。キャッチアップ現象といえる。

キャッチアップ現象とは?

キャッチアップ現象とは、小児の発達段階で、成長や発達に重要な時期である臨界期以外の時期に、それまで病気や環境により成長が障害されていても、その状況が改善されると、体重や身長などの成長度合いが、障害前よりも速度を上げて追いつく現象のことである。

 

 

 

 

 

54 小児の骨折の特徴で正しいのはどれか。

1.不全骨折しやすい。
2.圧迫骨折しやすい。
3.骨折部が変形しやすい。
4.骨癒合不全を起こしやすい。

解答1

解説

小児の骨折の特徴

小児の骨の特徴は、コラーゲン線維に富み、しなやかである。また、骨形成(リモデリング)も盛んに行われており、自己矯正能も高い。したがって、若木骨折や過成長がみられる。ちなみに、若木骨折とは、骨の一部に亀裂が生じるが、骨膜が厚いため完全には折れない骨折のことである。

1.〇 正しい。不全骨折(若木骨折)しやすい。なぜなら、小児の骨の特徴は、コラーゲン線維に富みしなやかであるため。不全骨折とは、骨が完全に断裂しておらず、部分的につながっている骨折である。
2.× 圧迫骨折しやすいのは、老年期である。圧迫骨折は、脆くなった骨(骨粗霧症)に生じやすい。
3.× 骨折部は、「しやすい」のではなく変形しにくい。なぜなら、小児の骨の特徴は、骨形成:リモデリング(骨形成と骨吸収の繰り返し)が盛んであるため。変形に対する矯正能も高い。
4.× 骨癒合不全を「起こしやすい」ではなく起こしにくい。なぜなら、小児は骨形成能が高いため。

圧迫骨折とは?

圧迫骨折とは、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。椎体骨折(圧迫骨折)の場合は、画像所見で①膨張した椎間板、②魚椎変形(楔状変形)、③骨陰影の減少などがみられる。

 

 

 

 

 

55 就労している妊婦に適用される措置と根拠法令との組合せで正しいのはどれか。

1.時差出勤:母子保健法
2.産前産後の休業:児童福祉法
3.軽易業務への転換:母体保護法
4.危険有害業務の制限:労働基準法

解答4

解説

母子保健法とは?

母子保健法とは、母性、乳幼児の健康の保持および増進を目的とした法律である。母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。各種届出は市町村長または特別区、指定都市の区長に届け出る。

1.× 時差出勤は、「母子保健法」ではなく、『雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)』で定められている。ちなみに、男女雇用機会均等法とは、1972年に施行された男女の雇用の均等及び待遇の確保等を目標とする日本の法律で、主に職場における性別による差別を禁止し、男女とも平等に扱うことを定められている。所管官庁は、厚生労働省である。
2.× 産前産後の休業は、「児童福祉法」ではなく、『労働基準法』で定められている。ちなみに、児童福祉法とは、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定める日本の法律である。児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。
3.× 軽易業務への転換は、「母体保護法」ではなく、『労働基準法』で定められている。ちなみに、母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。
4.〇 正しい。危険有害業務の制限は、『労働基準法』で定められている。
労働基準法(危険有害業務の就業制限)
第 64 条の3 使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性(以下「妊産婦」という。)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
2 前項の規定は、同項に規定する業務のうち女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務につき、厚生労働省令で、妊産婦以外の女性に関して、準用することができる。
3 前2項に規定する業務の範囲及びこれらの規定によりこれらの業務に就かせてはならない者の範囲は、厚生労働省令で定める。(※引用:「労働基準法」厚生労働省様HPより)

労働基準法とは?

労働基準法とは、労働者の生存権の保障を目的として、①労働契約や賃金、②労働時間、③休日および年次有給休暇、④災害補償、⑤就業規則といった労働者の労働条件についての最低基準を定めた法律である。

 

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