第105回(H28) 看護師国家試験 解説【午前56~60】

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56 低用量経口避妊薬について正しいのはどれか。

1.血栓症のリスクは増加しない。
2.1日飲み忘れたときは中止する。
3.授乳期間を通じて内服は可能である。
4.副効用に月経前症候群<PMS>の軽減がある。

解答4

解説

1.× 血栓症のリスクは、増加する。低用量ピルは、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンを主成分とする。特にエストロゲンには、心血管保護作用があると同時に、凝固亢進作用がある。つまり、血栓が形成されるリスクが高まる。そのため、血栓症の既往歴のある患者は、低用量経口避妊薬の服用は禁忌である。
2.× 1日飲み忘れたときでも中止する必要はない。飲み忘れに気付いた時点で、すぐに飲み忘れた分の2錠を飲むように指示することが多い。その後は予定通り飲み続ける。
3.× 授乳期間を通じての内服は行うことができない。なぜなら、低用量経口避妊薬はホルモン剤であり、乳汁分泌に影響を及ぼすため。授乳中に服用する場合、静脈血栓塞栓症のリスクが低下する産後6か月以降に服用を開始する。
4.〇 正しい。副効用に月経前症候群<PMS>の軽減がある。

月経前症候群とは?

月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいう。原因は、はっきりとはわかっていないが、女性ホルモンの変動が関わっていると考えられている。排卵のリズムがある女性の場合、排卵から月経までの期間(黄体期)にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌される。この黄体期の後半に卵胞ホルモンと黄体ホルモンが急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが、PMSの原因と考えられている。しかし、脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスなどの影響を受けるため、PMSは女性ホルモンの低下だけが原因ではなく多くの要因から起こるといわれている。精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがある。とくに精神状態が強い場合には、月経前不快気分障害(PMDD)の場合もある。治療法として、①日常生活の改善、②薬物療法(排卵抑制療法、症状に対する治療法、漢方療法)があげられる。

 

 

 

 

 

57 常位胎盤早期剝離のリスク因子はどれか。

1.肥満
2.妊娠糖尿病
3.帝王切開術の既往
4.妊娠高血圧症候群

解答4

解説

常位胎盤早期剝離とは?

常位胎盤早期剝離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいう。剥離出血のため、性器出血や激しい腹痛、子宮内圧の上昇、子宮壁の硬化が起こり、ショック状態を起こすことがある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。また、低酸素のために急速に胎児機能不全に陥る。

1.△ 肥満そのものは危険因子とはいえない。肥満とは、BMI<Body Mass Index>=体重(kg)/身長(m)2によって判定され、BMI:25以上を「肥満」、BMI:18.5未満を「やせ」としている。肥満は、妊娠高血圧症候群のリスクとなる。
2.× 妊娠糖尿病そのものは危険因子とはいえない。妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
3.× 帝王切開術の既往そのものは危険因子とはいえない。しかし、帝王切開の既往があり、子宮切開をした瘢痕部に胎盤がかかっていた場合、癒着胎盤のリスクが高くなる。
4.△ 正しい。妊娠高血圧症候群は、常位胎盤早期剝離の危険因子や機序ははっきりわかっていない。ただし、妊娠高血圧症候群は、子宮胎盤循環に影響するため特に注意を必要である。ちなみに、妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。

古典的帝王切開とは?

古典的帝王切開とは、子宮縦切開のことで、妊娠中期の帝王切開は子宮下部が厚くまた展退していないため頸部横切開が困難な時に適応となる。具体的な古典的帝王切開術の適応として、子宮筋腫合併や、胎位・胎盤の位置異常などである。また、超未熟児の帝王切開は、古典的帝王切開にて卵膜胎盤を大きく剝離し被膜児でだすのが児の管理上望ましい(※参考:「帝王切開術」日産婦誌60巻5号より)。

 

 

 

 

 

58 地域精神保健活動における二次予防はどれか。

1.精神科病院で統合失調症患者に作業療法を行う。
2.精神疾患患者に再燃を予防するための教育を行う。
3.地域の住民を対象にストレスマネジメントの講演会を行う。
4.会社の健康診断でうつ傾向があると判定された人に面接を行う。

解答4

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」

1.× 精神科病院で統合失調症患者に作業療法を行うのは、三次予防である。なぜなら、精神科病院で統合失調症患者に対する作業療法は機能回復・維持の要素が強いため。ちなみに、作業療法士とは、医師の指示のもとに手工芸・芸術・遊びやスポーツ・日常動作などを行うことにより、障害者の身体運動機能や精神心理機能の改善を目指す治療(作業療法)を行う専門職である。つまり、食事動作等、日常生活動作の回復が役割である。
2.× 精神疾患患者に再燃を予防するための教育を行うのは、三次予防である。なぜなら、再燃を予防は、疾病が発症した後の働きかけであるため。
3.× 地域の住民を対象にストレスマネジメントの講演会を行うのは、一次予防である。なぜなら、ストレスマネジメントは、健康教育に含まれる内容であるため。ちなみに、ストレスマネジメントとは、ストレスによって身体や心に悪影響を起こさないために、どのように対処するかを考えることである。ストレスを生じやすい状況を予防したり、生じた場合の対処方法をあらかじめ検討したりして、効果的にストレスを管理する。
4.〇 正しい。会社の健康診断でうつ傾向があると判定された人に面接を行うのは、二次予防である。なぜなら、健康診断で早期発見・早期治療しているため。

 

 

 

 

 

59 疾患と確定診断のために用いられる検査との組合せで最も適切なのはどれか。

1.脳炎:脳脊髄液検査
2.パニック障害:脳波検査
3.特発性てんかん:頭部MRI
4.パーソナリティ障害:頭部CT

解答1

解説

1.〇 正しい。脳炎は、脳脊髄液検査を用いる。日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染する。以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。脳脊髄液検査とは、細胞数増加や蛋白増加、糖の低下で原因を推定し、培養や遺伝子増幅検査(PCR)で確定診断を行う。
2.パニック障害は、日常の様子や医師との面談によって症状が当てはまっているか確認し診断される。パニック障害とは、誘因なく突然予期せぬパニック発作(動悸、発汗、頻脈などの自律神経症状、狂乱・死に対する恐怖など)が反復して生じる状態をいう。また発作が起こるのではないかという予期不安を認め、しばしば広場恐怖を伴う。治療として、①SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、②抗不安薬、③認知行動療法(セルフコントロール)などである。脳波検査とは、頭皮に電極を取り付けて脳の活動状態を調べる検査で、てんかんや脳腫瘍、脳出血などの診断に用いられる。
3.特発性てんかんとは、検査をしても異常がみつからず、原因不明とされるてんかんである。生まれた時からてんかんになりやすい傾向を持っている。一方、頭部MRIとは、MRI検査で脳の血管の情報を画像化することである。脳の主要血管の形態診断や、くも膜下出血・脳梗塞等の脳血管障がい、動脈瘤等の脳血管の病変、脳腫瘍等の血行支配の状態等を調べることができる。
4.パーソナリティ障害は、日常の様子や医師との面談によって症状が当てはまっているか確認し診断される。パーソナリティ障害とは、人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんでいたり、周りが困っている場合に診断される精神疾患である。頭部CTとは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。

境界性パーソナリティ障害とは?

 境界性パーソナリティ障害では、感情の不安定性と自己の空虚感が目立つ。こうした空虚感や抑うつを伴う感情・情緒不安定の中で突然の自殺企図、あるいは性的逸脱、薬物乱用、過食といった情動的な行動が出現する。このような衝動的な行動や表出される言動の激しさによって、対人関係が極めて不安定である。見捨てられ不安があり、特定の人物に対して依存的な態度が目立ち、他社との適切な距離が取れないなどといった特徴がある。

【関わり方】
患者が周囲の人を巻き込まないようにするための明確な態度をとる姿勢が重要で、また患者の自傷行為の背景を知るための面接が必要である。

 

 

 

 

 

60 生活技能訓練<SST>について正しいのはどれか。

1.退院支援プログラムの1つである。
2.診断を確定する目的で実施される。
3.セルフヘルプグループの一種である。
4.精神分析の考え方を応用したプログラムである。

解答1

解説

社会生活技能訓練とは?

社会生活技能訓練(SST:Social Skills Training)は、社会生活を送るうえでの技能を身につけ、ストレス状況に対処できるようにする集団療法の一つ(認知行動療法の一つ)である。精神科における強力な心理社会的介入方法である。患者が習得すべき行動パターンを治療者(リーダー)が手本として示し、患者がそれを模倣して適応的な行動パターンを学ぶという学習理論に基づいたモデリング(模倣する)という技法が用いられる。

1.〇 正しい。退院支援プログラムの1つである。生活技能訓練(SST)は、退院後の社会生活の中での困りごとを想定し、解決していくための技能を訓練していく。対人関係能力(あいさつ・人の要求を丁寧に断る・謝るなど)や生活技能などを高め、退院後の地域生活や社会復帰を支えるプログラムのひとつである。外来でも行われており、厳密には退院支援のためだけのものではない。
2.× 診断を確定する目的で実施されていない。なぜなら、生活技能訓練(SST)は社会復帰に向けたリハビリテーションの一つであるため。
3.× セルフヘルプグループの一種ではない。セルフヘルプグループとは、何らかの共通した問題や課題を抱えた人やその家族たちが主体となり、互いに支え合う自主的に活動するグループのことである。生活技能訓練(SST)は、看護師や作業療法士などの医療専門職が参加する。
4.× 精神分析の考え方を応用したプログラムではない。生活技能訓練(SST)は、認知のゆがみ(ものの考え方の誤り)に気づかせ、少しずつ行動を変容させる認知行動療法の考え方を応用したプログラムである。精神分析とは、フロイトにより開発され「自由連想法」によって無意識のうちに抑制されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせるものである。

セルフヘルプグループとは?

自助グループ(セルフヘルプグループ、当事者グループ)に、同じ問題や悩みを抱える者同士が集まり、自分の苦しみを訴えたり、仲間の体験談を聞いたりすることで問題を乗り越える力を養っていくものである。同じ悩みをかかえる人々がコミュニティをつくって交流するもので、例えば、青年期のひきこもり状態にある者の支援として、同じような健康課題への対処能力を高めるために活動するグループをつくることが有効である。

 

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