第111回(R4) 看護師国家試験 解説【午前71~75】

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71 チューブ型の胃瘻の管理について、介護する家族に看護師が指導する内容で正しいのはどれか。

1.「栄養剤の注入後に白湯を注入してください」
2.「胃瘻のチューブはご家族で交換してください」
3.「胃瘻のチューブは同じ位置に固定してください」
4.「下痢のときは栄養剤の注入速度を速めてください」

解答1

解説
1.〇 正しい。「栄養剤の注入後に白湯を注入してください」と指導する。白湯(さゆ)とは、水を沸かしただけで何も入れていない湯のことである。終了後は白湯を流すことで、チューブの閉塞や細菌の繁殖の予防となる。
2.× 胃瘻のチューブの交換は、「ご家族」ではなく医師が行う。特に、交換手技に技術を要する場合や痛みを伴う場合、患者の状態が不安定な場合など、交換時に何らかのトラブルや危険が予測される。
3.× 胃瘻のチューブは、「同じ」ではなく違う位置に固定する。なぜなら、毎回同じ位置に固定すると、その固定箇所に皮膚トラブルが起きやすいため。チューブは直接皮膚に当たらないように、ガーゼなどで覆いながら固定するのが良い。
4.× 下痢のときは栄養剤の注入速度を「速める」のではなく遅く(100mL/時以下)する。栄養剤の注入速度が速すぎる場合、蠕動運動が亢進し下痢を招くことがある。注入速度を調整後も下痢が続くようであれば、栄養剤の細菌汚染などが考えられる。下痢により栄養状態の低下を招くことにもつながりかねないため、医師に相談・連絡し指示を仰ぐことが望ましい。

 

 

 

 

 

72 病棟で患者の口腔ケア改善に取り組むために担当チームを作った。
 これは看護管理のプロセスのどれか。

1.計画
2.指揮
3.統制
4.組織化

解答4

解説

ファヨールの管理原則

①計画:目標数値を設定し、外部・内部環境を分析して戦略を立案する。
②組織化:組織体を設計、もしくは再構築して各部門の役割と責任を明確する。
③指揮:達成に向けて指示を出す。
④調整:各部門の活動は部分最適になることがある。
⑤統制:評価・モニタリングして計画未達の場合には計画の修正や新たな施策を検討する。
そして、再び①〜④のプロセスを繰り返していきます。

1.× 計画とは、目標数値を設定し、外部・内部環境を分析して戦略を立案することである。
2.× 指揮とは、達成に向けて指示を出すことである。
3.× 統制とは、評価・モニタリングして計画未達の場合には計画の修正や新たな施策を検討することである。
4.〇 正しい。組織化が、「病棟で患者の口腔ケア改善に取り組むために担当チームを作った」ことに該当する。組織化とは、組織体を設計、もしくは再構築して各部門の役割と責任を明確することである。

 

 

 

 

73 多発性骨転移がある終末期の大腸癌患者(53歳、女性)が、外科病棟から緩和ケア病棟に夫に付き添われ転棟してきた。
 転棟時の申し送りについて、緩和ケア病棟の看護師が外科病棟の看護師から収集する情報で最も優先すべきなのはどれか。

1.疼痛コントロールの状況
2.自宅の居住環境
3.大腸癌の術式
4.夫の面会頻度

解答1

解説

本症例のポイント

・大腸癌患者(53歳、女性、多発性骨転移:終末期
・外科病棟から緩和ケア病棟に夫に付き添われ転棟。
→緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に同定し、適切な評価と治療によって、苦痛の予防と緩和を行うことで、QOL(Quality of Life:生活の質) を改善するアプローチである。

1.〇 正しい。疼痛コントロールの状況を収集する情報で最も優先すべきである。緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に同定し、適切な評価と治療によって、苦痛の予防と緩和を行うことで、QOL(Quality of Life:生活の質) を改善するアプローチである。
2.× 自宅の居住環境の優先度は低い。なぜなら、自宅の居住環境の情報は退院時に収取すべき情報であるため。
3.× 大腸癌の術式の優先度は低い。なぜなら、本症例は「大腸癌患者」との記載はあるものの大腸癌の手術を行ったことなどは記載されていないため。まずは緩和ケアにおいて優先して情報収集すべきものが他にある。
4.× 夫の面会頻度の優先度は低い。なぜなら、緩和ケア病棟に夫に付き添われ転棟してこられた時点で、夫婦仲は良好と推測できるため。

緩和ケアの定義

生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。(世界保健機関:WHO 2002年提唱)

 

 

 

 

 

74 看護師等の人材確保の促進に関する法律に規定されている、離職した看護師の復職の支援に関連する制度はどれか。

1.看護師等免許保持者の届出
2.特定行為に係る研修
3.教育訓練給付金
4.業務従事者届

解答1

解説

看護師等の人材確保の促進に関する法律とは?

この法律は、我が国における急速な高齢化の進展及び保健医療を取り巻く環境の変化等に伴い、看護師等の確保の重要性が著しく増大していることにかんがみ、看護師等の確保を促進するための措置に関する基本指針を定めるとともに、看護師等の養成、処遇の改善、資質の向上、就業の促進等を、看護に対する国民の関心と 理解を深めることに配慮しつつ図るための措置を講ずることにより、病院等、看護を受ける者の居宅等看護が提供される場所に、高度な専門知識と技能を有する看護師等を確保し、もって国民の保健医療の向上に資することを目的とする。

(看護師等の届出等)
第十六条の三 看護師等は、病院等を離職した場合その他の厚生労働省令で定める場合には、住所、氏名その他の厚生労働省令で定める事項を、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県センターに届け出るよう努めなければならない。
2 看護師等は、前項の規定により届け出た事項に変更が生じた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を都道府県センターに届け出るよう努めなければならない。
3 病院等の開設者等その他厚生労働省令で定める者は、前二項の規定による届出が適切に行われるよう、必要な支援を行うよう努めるものとする。

(※引用:「看護師等の人材確保の促進に関する法律」厚生労働省HPより)。

1.〇 正しい。看護師等免許保持者の届出は、看護師等の人材確保の促進に関する法律に規定されている。これは、第十六条の三に規定されている。
2.× 特定行為に係る研修は、「保健師助産師看護師法」に規定されている。保健師助産師看護師法とは、保健師・助産師および看護師の資質を向上し、もって医療および公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする日本の法律である。保健師助産師看護師法の37条2に「特定行為を手順書により行う看護師は、指定研修機関において、当該特定行為の特定行為区分に係る特定行為研修を受けなければならない」と記載されている(※引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、特定行為の種類として、①人工呼吸器の設定や酸素投与量の調整、②ドレーンの吸引圧の調整や抜去、③胃ろう・腸ろう・膀胱ろうカテーテルや、気管カニューレの交換などがあげられる。
3.× 教育訓練給付金は、「雇用保険法」に規定されている。雇用保険法の37条の2に「教育訓練給付金は、次の各号のいずれかに該当する者(以下「教育訓練給付対象者」という。)が、厚生労働省令で定めるところにより、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合(当該教育訓練を受けている場合であつて厚生労働省令で定める場合を含み、当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により厚生労働省令で定める証明がされた場合に限る。)において、支給要件期間が三年以上であるときに、支給する」と記載されている(※引用:「雇用保険法」e-GOV法令検索様HPより)
4.× 業務従事者届は、「保健師助産師看護師法」に規定されている。保健師助産師看護師法とは、保健師・助産師および看護師の資質を向上し、もって医療および公衆衛生の普及向上を図ることを目的とする日本の法律である。保健師助産師看護師法の33条に「業務に従事する保健師、助産師、看護師又は准看護師は、厚生労働省令で定める二年ごとの年の十二月三十一日現在における氏名、住所その他厚生労働省令で定める事項を、当該年の翌年一月十五日までに、その就業地の都道府県知事に届け出なければならない」と記載されている(※引用:「保健師助産師看護師法」e-GOV法令検索様HPより)。

雇用保険法とは?

雇用保険法とは、「労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ること」(第1条)を目的として制定された、日本の法律である。つまり、失業・雇用継続等に関する保険の制度である。保険者は日本政府(国:厚生労働省)。財源は雇用者と雇用主が社会保険として負担するほか、国費投入もされている。つまり雇用保険は、労働保険のひとつで、いわゆる失業保険を中心とするものである。

 

 

 

 

75 災害発生時に行うSTART法によるトリアージで最初に判定を行う項目はどれか。

1.意識
2.呼吸
3.循環
4.歩行

解答4

解説

START法とは?

START法(Simple Triage and Rapid Treatment法)とは、フローチャートに従って、歩行可能な患者は緑に区分し、歩けない患者のABCDを評価し、赤、黄、黒に区分していく方法である。この際、迅速性が求められるため、緊急処置は行わない(例外として、気道確保、圧迫止血は行う)。

①歩行の可否
②呼吸の有無
③呼吸数
④循環
⑤意識レベル

1.× 意識は、最後に確認する。簡単な指示に応じれる場合は、「黄色(Ⅱ:準緊急)」である。簡単な指示に応じれない場合は、「赤(Ⅰ:緊急)」である。
2.× 呼吸は、歩行の後に確認する。①自発呼吸がなく、気道確保しても呼吸ない場合は「黒(0:死亡)」である。②自発呼吸がなく、気道確保し呼吸があった場合は「赤(Ⅰ:緊急)」である。自発呼吸がある場合は、呼吸数の判断にうつる。
3.× 循環は、呼吸の後に確認する。①脈拍120拍/分以上、もしくは触れない場合は「赤(Ⅰ:緊急)」である。②脈拍120拍/分未満の場合は最後の意識を確認する。
4.〇 正しい。歩行が災害発生時に行うSTART法によるトリアージで最初に判定を行う項目である。

(※引用:医師会の災害時医療救護体制「トリアージの区分」)

トリアージとは

トリアージとは、災害時などの制約があるなかで、治療・搬送の優先順位を決めることである。災害時においては医療スタッフや医薬品などの医療資源が限られるため、より効果的に傷病者の治療を行うために、治療や搬送の優先順位を決定するものである。

 

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