第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後66~70】

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問題66 Aさん( 88歳、女性、要介護1)は長女(58歳、会社員)と2人暮らしで、胃瘻を造設し訪問看護を利用している。看護師の訪問時、Aさんは頭痛、嘔気を訴え、ベッドに横になっていた。バイタルサインは、体温 37.6℃、 呼吸数24/分、脈拍96/分、整、血圧 102/76mmHg、口唇が乾燥している。室温は30℃である。長女に連絡し、かかりつけ医に往診を依頼することにした。
 医師が到着するまでの訪問看護師の対応で適切なのはどれか。

1.頭を高くする。
2.腋窩を冷やす。
3.水を飲ませる。
4.中枢から末梢に下肢をマッサージする。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん( 88歳、女性、要介護1)
・2人暮らし(長女、58歳、会社員)
・胃瘻を造設し、訪問看護を利用。
・看護師の訪問時:頭痛嘔気、ベッドに臥床。
・【バイタルサイン】体温 37.6℃、 呼吸数24/分、脈拍96/分、整、血圧 102/76mmHg
口唇が乾燥室温:30℃
→本症例は、熱中症が疑われる。熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指す。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、 救急搬送されたり、場合によっては死亡することもある。主な初期症状として、めまい(目眩、眩暈)や立ちくらみ、一時的な失神などがあげられる。

1.× 頭を高くする優先度は低い。なぜなら、頭を高くすることは、呼吸の改善や誤嚥防振のために行われるため。
2.〇 正しい。腋窩を冷やす。なぜなら、本症例は、熱中症が疑われるため。腋窩には腋窩動脈走行し、比較的太い血管を冷やすことで体温の低下を促すことができる。腋窩動脈のほかにも外頸動脈や大腿動脈などを冷やすとよい。
3.× 水を飲ませる優先度は低い。なぜなら、本症例は、Aさんは胃瘻が造設されているため。通常の口からの水分摂取は誤嚥のリスクがあり難しい。
4.× 中枢から末梢に下肢をマッサージする優先度は低い。血行促進やむくみの軽減目的のマッサージは、静脈還流量を促すために、「末梢」から「中枢」に行う。

 

 

 

 

 

問題67 指定訪問看護ステーションについて正しいのはどれか。

1.看護職員以外は配置できない。
2.緊急時用の薬剤の保管が義務付けられている。
3.訪問看護指示書に基づいて療養者のケアを行う。
4.従事する看護職員は5年以上の臨床経験が必要である。

解答

解説

訪問看護とは?

訪問看護とは、看護を必要とする患者が在宅でも療養生活を送れるよう、かかりつけの医師の指示のもとに看護師や保健師などが訪問して看護を行うことである。訪問看護師の役割として、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。訪問看護の指示書には、①訪問看護指示書、②特別訪問看護指示書、③精神科訪問看護指示書などがある。②特別訪問看護指示書とは、「厚生労働大臣が定める疾病等」の療養者や指定された医療処置・管理が必要であると主治医が認める者などに交付される。医療保険が適用され、交付は原則として月1回まで、有効期間は14日である。③精神科訪問看護指示書とは、精神疾患のある利用者とその家族を対象とし、地域や家庭で療養上の援助・指導が必要であると主治医が認める場合に交付される。有効期間は6か月以内で、介護保険対象者であっても医療保険によるサービス提供となる。

1.× 看護職員以外も「配置できる」。第二節人員に関する基準(看護師等の員数)において、第六十条 指定訪問看護の事業を行う者(以下「指定訪問看護事業者」という。)が当該事業を行う事業所(以下「指定訪問看護事業所」という。)ごとに置くべき看護師その他の指定訪問看護の提供に当たる従業者(以下「看護師等」という。)の員数は、次に掲げる指定訪問看護事業所の種類の区分に応じて、次に定めるとおりとする。一 病院又は診療所以外の指定訪問看護事業所(以下「指定訪問看護ステーション」という。)、イ 保健師、看護師又は准看護師(以下この条において「看護職員」という。) 常勤換算方法で、二・五以上となる員数、ロ 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士 指定訪問看護ステーションの実情に応じた適当数(※一部引用:「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」e-GOV法令検索様HPより)
2.× 緊急時用の薬剤の保管は、義務付けられて「いない」。訪問看護ステーションは、常備が必要とする薬剤のうち浣腸液以外は購入・保管することはできず、また、購入したとしても費用を利用者に請求できないため、医療機関の代理で購入する場合以外は、費用が持ち出しとなる。薬剤等がないために迅速に対応できず症状が悪化した結果、医師の診察が必要となった場合がある。脱水症状に関する輸液、抗生剤、抗けいれん剤、高カロリー輸液がないことで、入院が必要になった事例もある。
3.〇 正しい。訪問看護指示書に基づいて療養者のケアを行う。訪問看護の指示書には、①訪問看護指示書、②特別訪問看護指示書、③精神科訪問看護指示書などがある。主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェックや療養指導、医療処置、身体介護などを行う。在宅看議の目的は、患者が住み慣れた地域で自分らしく安心して生活を送れるように、生活の質(QOL)向上を目指した看護を提供することである。療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、その人らしさやQOLを考える。
4.× 従事する看護職員は、5年以上などの臨床経験年数の条件はない。ちなみに、訪問看護ステーションの管理者の条件は、「専従かつ常勤の保健師又は看護師であって、適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者」と定められている。

 

 

 

 

 

問題68 Aさん(63歳、男性)は妻と2人暮らしで、肺癌の終末期で在宅医療を受けて医療用麻薬を使用中である。看護師が訪問したとき、Aさんは椅子に座って咳をしながら苦痛に耐えている様子であった。 妻は「レスキュー薬が効くまでは苦しそうなので、何か私にできることはありますか」と訪問看護師に尋ねた。
 このときの訪問看護師の妻への対応で適切なのはどれか。

1.救急車を要請するよう提案する。
2.Aさんを仰臥位にする介助方法を指導する。
3.Aさんの背中をさすりながら傍にいるよう勧める。
4.一度に2倍量のレスキュー薬の服用を試すよう説明する。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(63歳、男性、肺癌の終末期
・2人暮らし(妻)
・在宅医療:医療用麻薬を使用中
・訪問時:椅子に座って咳をしながら苦痛に耐えている様子。
・妻「レスキュー薬が効くまでは苦しそうなので、何か私にできることはありますか」と。
→レスキュー薬とは、主たる薬理作用には鎮痛作用を有しないが、鎮痛薬と併用することにより鎮痛効果を高め、特定の状況下で鎮痛効果を示す薬物のことをいう。

→終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。患者が可能な限り前向きに生活できるような支援体制を提供するという。従来、医療・介護の現場では、終末期における治療の開始・中止・変更の問題は重要な課題のひとつである。疾病の根治を目的とせず延命のみを目的とした対症療法を一般的に延命治療と称し、人工呼吸・人工栄養(経管栄養)、人工透析などが含まれる。しかし、終末期患者では意思疎通の困難な場合も多く、患者の意思に反する治療(延命)になりかねない。治療・ケア内容に関する患者や家族の意思や希望を病状などに応じて繰り返し確認し、それを患者・家族・医療者で共有し、方針を見いだすことが非常に重要である。

1.× 救急車を要請するよう提案する必要はない。なぜなら、本症例はレスキュー薬がすでに使用されているため。現時点では、薬の効果を観察する。
2.× Aさんを仰臥位にする介助方法を指導する必要はない。なぜなら、仰臥位は呼吸軽減に寄与しにくいため。仰臥位ではなく、頭を高くしたり、セミファーラー位が望ましい。
3.〇 正しい。Aさんの背中をさすりながら傍にいるよう勧める。なぜなら、咳をしながら苦痛に耐えていると、不安が強くなり、さらに呼吸が乱れやすい。Aさんがそばにいることで、安心感やリラックスをもたらす効果がある。
4.× 一度に2倍量のレスキュー薬の服用を試すよう説明する必要はない。なぜなら、医療用麻薬の使用は、医師の指示に従って適切な量を服用することが重要であるため。いかなる状況であれ、看護師の判断で服薬量を調整してはならないため、まずは主治医に報告や相談、連絡して指示を仰ぐことが重要である。

 

 

 

 

 

問題69 A病院の組織図を示す。
 医療安全管理を担う部門が横断的に活動する位置はどれか。

1.①
2.②
3.③
4.④

解答

解説

(※図引用:「東部地域病院医療安全管理体制組織図」東京都立東部地域病院様HPより)

1.× ①は、院長である。
2.〇 正しい。が、医療安全管理を担う部門が横断的に活動する位置である。
3.× ③は、部門ごとの組織(看護部、検査部、薬剤科など)である。
4.× ④は、部門の各部署(リハビリ部の場合:①急性期、②慢性期もしくは、1階、2階など)に該当する。

 

 

 

 

 

問題70 医療法に基づき医療機関が医療の安全を確保する目的で行うのはどれか。

1.医療安全支援センターを設置する。
2.医療安全管理者養成研修を実施する。
3.医療の安全を確保するための指針を策定する。
4.医療安全管理のために必要な研修を2年に1回実施する。

解答

解説

医療法とは?

医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。

【医療法で定められている内容の概略】
医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項。
医療の安全を確保するために必要な事項。
病院、診療所および助産所の開設および管理に関して必要な事項。
医療提供施設相互間の機能分担のために必要な事項。
医療提供施設相互間の業務の連携を推進するために必要な事項。

1.× 医療安全支援センターの設置は、医療機関ではない。医療安全支援センターとは、医療法第6条の13の規定に基づき、都道府県、保健所を設置する市及び特別区により、日本全国で380箇所以上設置されている医療の安全に関する情報の提供、研修の実施、意識の啓発などを行う機関である。医療に関する苦情・心配や相談に対応するとともに、医療機関、患者さん・住民に対して、医療安全に関する助言および情報提供等を行っている。
2.× 医療安全管理者養成研修を実施するのは、医療機関ではない。日本看護協会と都道府県看護協会が連携して研修を提供している(※参考:「医療安全管理者養成研修」公益社団法人日本看護協会 看護研修学校HPより)。医療安全管理者とは、職種横断的な医療安全活動の推進や、部門を超えた連携に考慮し、職員教育・研修の企画、実施、実施後の評価と改善を行うものである。したがって、医療安全管理者養成研修とは、「組織的な医療安全管理体制を確立するために必要な基本的知識・方法について学習し、自施設における医療安全管理者として活動できる人材を育成する」ことを目的に、平成19年度より開催しているものである。
3.〇 正しい。医療の安全を確保するための指針を策定する。第6条12項:病院等の管理者は、前二条に規定するもののほか、厚生労働省令で定めるところにより、医療の安全を確保するための指針の策定、従業者に対する研修の実施その他の当該病院等における医療の安全を確保するための措置を講じなければならない(※引用:「医療法」e-GOV法令検索様HPより)。
4.× 医療安全管理のための必要な研修の回数は、法的に決められていない

医療安全管理者とは?

医療安全管理者とは、医療機関の管理者から委譲された権限に基づいて、組織全体を俯瞰した安全管理に関する医療機関内の体制の構築に参画し、委員会等の各種活動の円滑な運営を支援する。また、医療安全に関する職員への教育・研修、情報の収集と分析、対策の立案、医療事故・発生時の初動対応、再発防止策立案、発生予防および発生した医療事故の影響拡大の防止等に努める。そして、これらを通し、安全管理体制を組織内に根づかせ機能させることで、医療機関における安全文化の醸成を促進する。

(※一部引用:「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」厚生労働省HPより)

 

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