第112回(R5) 看護師国家試験 解説【午後76~80】

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問題76 全身性エリテマトーデス〈SLE:systemic lupus erythematosus〉でプレドニゾロンを長期間服用している成人女性の患者で、血中濃度が顕著に低下しているのはどれか。

1.インスリン
2.甲状腺ホルモン
3.エストラジオール
4.副甲状腺ホルモン〈PTH〉
5.副腎皮質刺激ホルモン〈ACTH〉

解答

解説

全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。

プレドニゾロンとは、ステロイド薬で、炎症・免疫系をおさえる作用がある。炎症性の病気、免疫系の病気、アレルギー性の病気などに広く使用されている。たとえば、膠原病、ネフローゼ、関節リウマチ、重い喘息、ひどいアレルギー症状、めまい、耳鳴り などに用いる。「妊婦または妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されており、気を付ければ投与可能である。

1.× インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。
2.× 甲状腺ホルモンとは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があり、新陳代謝を調節している。脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ働きがある。
3.× エストラジオールとは、エストロゲンの一種で、母体の肝臓と胎盤、胎児の副腎を経て生成されるため、その血中濃度は胎児の生命状態の指標として用いられる。エストロゲンの中で最も強い卵胞ホルモン作用を持つ物質で、女性の二次性徴に働き、卵巣機能調節、卵胞発育、子宮内膜増殖などの作用を示す。
4.× 副甲状腺ホルモンとは、副甲状腺から分泌され、腎臓のカルシウム再吸収およびリンの排泄促進作用などがあり、血中のカルシウム濃度を上昇させる。つまり、副甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、血中カルシウム濃度が低下する。それに伴い、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれんなどの症状が起こる。別名:パラトルモンである。
5.〇 正しい。副腎皮質刺激ホルモン〈ACTH〉は、全身性エリテマトーデスでプレドニゾロン(ステロイド薬)を長期間服用している成人女性の患者で、血中濃度が顕著に低下している。なぜなら、プレドニゾロン(ステロイド薬)を長期間服用している場合、常にステロイドレベルが上昇している状態となる。したがって、ステロイドレベルを上げる必要がなくなり、副腎皮質刺激ホルモンの分泌を相対的にさぼり始めることにつながる(ネガティブフィードバック)。ちなみに、副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック

【ネガティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンが低下する → ネガティブフィードバック
②エストロゲンレベルが低下したらゴナドトロピンが上昇する → ネガティブフィードバック

【ポジティブフィードバック】
①エストロゲンレベルが上昇したらゴナドトロピンも上昇する → ポジブフィードバック
※ポジブフィードバックは一定条件が整わないと発現しません。ヒトではストラジオールが 200 pg/ml 以上に達し、それが 48 時間以上持続した時のみ発現します。間脳や下垂体でどのような現象が起きているかは考慮する必要がありません。

(※図・一部引用:「ポジティブフィードバックとネガティブフィードバック」より)

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

 

 

 

問題77 心電図検査の胸部誘導で電極を第4肋間胸骨右縁に装着するのはどれか。

1.Ⅰ
2.V1
3.V2
4.V4
5.aVR

解答

解説

(※図引用:「心電図電極を正しく装着しよう」新庄病院様HPより)

MEMO

・V1:第4肋間胸骨右縁
・V2:第4肋間胸骨左縁
・V3:V2とV4の中間点
・V4:第5肋間と左鎖骨中線の交点
・V5:V4と同じ高さの水平線と左前腋窩線の交点
・V6:V4と同じ高さの水平線と左中腋窩線の交点

1.× Ⅰの電極は、右手首と左手首に装着する(四肢誘導)。左室の側壁を見ている。つまり、主に右室側から心臓を見る誘導である。
2.〇 正しい。V1の電極は、第4肋間胸骨右縁に装着する(胸部誘導)。胸部誘導の一つで、右室側から見ている。
3.× V2の電極は、第4肋間胸骨左縁に装着する(胸部誘導)。右室と左室前壁側から見ている。
4.× V4の電極は、第5肋間と左鎖骨中線の交点に装着する(胸部誘導)。心室中隔と左室前壁方向を見ている。
5.× aVRの電極は、右手首と左手首、左足首に装着する(四肢誘導)。右肩から心臓を見る誘導である。逆転した波形が見られる。

心電図の見方

【四肢誘導】
第Ⅰ誘導:左室の側壁を見ている。つまり、主に右室側から心臓を見る誘導である。
第Ⅱ誘導:心臓を心尖部から見ている。 つまり、右室と左室前壁側から心臓を見る誘導である。
第Ⅲ誘導:右室側面と左室下壁を見ている。つまり、心室中隔と左室前壁から心臓を見る誘導である。
aVR誘導:右肩から心臓を見る誘導である。逆転した波形が見られる。
aVL誘導:左肩から心臓を見る誘導である。
aVF誘導:心臓を、ほぼ真下から見ている。

【胸部誘導】
V1誘導:右室側から見ている。
V2誘導:右室と左室前壁側から見ている。
V3誘導:心室中隔と左室前壁から見ている。
V4誘導:心室中隔と左室前壁方向を見ている。
V5誘導:左室前壁と側壁を見ている。
V6誘導:左室側壁を見ている

第Ⅱ誘導が四肢誘導で、波形が最も明瞭に描かれ、一般的によく見る心電図の波形となる。

 

 

 

 

 

問題78 プリン体の代謝産物である尿酸で正しいのはどれか。

1.下肢末端は温度が下がるので結晶化しやすい。
2.男性ホルモンによって腎排泄が増加する。
3.激しい運動で産生が減少する。
4.利尿薬によって排泄される。
5.肝臓で分解される。

解答

解説

尿酸とは?

尿酸とは、「プリン体」という物質が体内で分解されてできるものである。分解場所は肝臓である。プリン体は運動したり臓器を動かしたりするためのエネルギー物質で、常に体内で作られている。過剰に蓄積されると痛風となる。

痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足跳関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

1.〇 正しい。下肢末端は温度が下がるので結晶化しやすい。したがって、冷えやすい下肢(四肢末端)、特に第1中足趾関節に好発する。
2.× 腎排泄が増加するのは、「男性ホルモン」ではなく女性ホルモン(エストロゲン)である。女性ホルモン(エストロゲン)に作用によって、尿酸の腎排出を促すため、女性が男性よりも痛風になりにくい。痛風の9割は男性患者である。
3.× 激しい運動で産生は、「減少」ではなく増加する。激しい運動を行うことで、筋肉は消耗し乳酸が増加し、腎血流量の低下や尿酸の排泄機能が低下して尿酸値が上がる。そのため、尿酸値の高い人は無酸素運動などの激しい運動は避けたほうがよく、尿酸を増やさない有酸素運動などの軽い運動が適している。
4.× 利尿薬によって排泄されない。むしろ、痛風に対しループ利尿薬は禁忌である。ループ利尿薬は、尿酸と同じトランスポーターを競合するため尿酸の排泄が低下し、尿酸値が上昇させる。また、腎糸球体ろ過量の減少に伴う尿酸排泄の低下も原因として考えられている。つまり、痛風のリスクを増加させる要因となることがある。
5.× 「肝臓」ではなく腎臓で分解される。腎臓は、老廃物や余分な水分、塩分などを尿として排泄することで、体の中の水分量やナトリウムやカリウムといったイオンバランスを適正に保ったり、血液の酸性・アルカリ性を調節したり、体内を常に最適な環境にする機能がある。一方、肝臓は、血漿蛋白質の大部分を合成している。小腸で吸収されたアミノ酸は肝臓に運ばれ、肝臓にて蛋白質に合成され、血液によって各組織に運ばれる。そのほかにも肝臓には、①代謝、②解毒、③胆汁の生成・排泄、④生体防御の働きを持つ。

 

 

 

 

 

問題79 血液透析について正しいのはどれか。

1.合併症は腹膜炎が多い。
2.食事はカルシウムを制限する。
3.導入初期には不均衡症候群が起こる。
4.導入の原因疾患はIgA腎症が最も多い。
5.透析に用いる半透膜はタンパク質が通過する。

解答

解説

血液透析とは?

血液透析とは、1週間に2~3回の通院をして、3~4時間の治療を受ける必要がある。血液透析は、シャント肢から十分な血流を保ちながら体外循環を行い、体液量や電解質濃度を是正するとともに尿毒素などの血液浄化を行う治療である。治療中、除水量が多いと循環動態に影響を及ぼしたり、血液中の電解質に急激な変化が生じたりすることがある。

血液透析が必要となる最も多い理由は、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全:糖尿病性腎症)である。ちなみに、慢性腎不全とは、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質塩分リンの制限

1.× 合併症は腹膜炎が多いのは、「腹膜透析」である。なぜなら、体外から腹腔内へとつながるカテーテルを腹部に留置しているため。透析患者さんは、尿量が少ない、もしくは尿が出ないため、排尿によって尿路を十分に洗い流すことができない場合が多い。
2.× 食事は、カルシウムを制限する必要はない。血液透が必要となる最も多い理由は、腎臓が血液から老廃物を十分にろ過できなくなること(腎不全)である。慢性不全に陥っている場合は、十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限が必要となる。
3.〇 正しい。導入初期には不均衡症候群が起こる。症状は、透析中から透析終了後12時間以内に起こる頭痛、吐き気、嘔吐などである。透析により血液中の尿毒素は取り除かれるが、尿毒素が除かれにくい脳との間に濃度差が生じるために起こると考えられている。
4.× 導入の原因疾患は、「IgA腎症」ではなく糖尿病性腎症が最も多い。糖尿病性腎症とは、糖尿病の合併症である。糖尿病性腎症の場合、徐々に病気が進行するため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要である。糖尿病性腎症が原因で透析を受けることになった人が、全透析患者のうち44.1%と最も多い割合を占めている。ちなみに、IgA腎症とは、検尿で血尿や蛋白尿を認め、腎臓の糸球体に免疫グロブリンのIgAという蛋白が沈着する病気である。多くは慢性の経過をたどる。
5.× 透析に用いる半透膜を、タンパク質は通過しない。なぜなら、タンパク質は分子が大きいため。半透膜とは、ある物質は通過させ、別の物質は通過させない特徴を持った膜のことである。血液透析に用いる半透膜は、主に小分子の溶質(尿素、クレアチニン、電解質など)を通過させる。

透析治療の合併症

①不均衡症候群、②高血圧(透析開始時)、③低血圧、④貧血、⑤感染症、⑥二次性副甲状腺機能障害、⑦アミロイド骨関節症、⑧高カリウム血症など。

連続携行式腹膜透析とは?

腹膜に囲まれた腹腔内に透析液を注入し、一定時間貯留している間に腹膜を介して血中の不要な老廃物や水分を透析液に移行させた後、その液を体外に取り出して血液を浄化する。透析液の交換はご自身で6時間~8時間ごと、1日2~4回程度行う。月1〜2回程度の通院が必要である。

 

 

 

 

 

問題80 成人に経鼻経管栄養の胃管を挿入する方法で適切なのはどれか。

1.無菌操作で行う。
2.挿入時、患者の体位は仰臥位にする。
3.胃管が咽頭に達するまで頸部を前屈してもらう。
4.胃管が咽頭に達したら嚥下を促す。
5.水を注入して胃管の先端が胃内に到達したことを確認する。

解答

解説

経鼻経管栄養法とは?

経鼻経管栄養は、鼻の穴からチューブを挿入して胃や腸まで通し、栄養剤を注入する方法である。特別な手術が不要で、必要な栄養素を比較的容易に摂取することが可能である。胃食道逆流や誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こすリスクがあるため、短期間で口から栄養を摂れるまで回復すると見込まれる場合など、一時的な処置として行われる。

1.× 無菌操作で行う必要はない。なぜなら、鼻腔や咽頭、食堂は無菌状態ではないため。ただし、処置する側が感染しないように予防する必要がある。ちなみに、気管内吸引は無菌操作で行う。なぜなら、口腔内吸引に使用した後のカテーテルを気管内吸引に使うことは感染の可能性があるため。
2.× 挿入時、患者の体位は「仰臥位」ではなく半坐位にする。なぜなら、半坐位は誤嚥防止・呼吸苦の改善できるため。
3.× 胃管が咽頭に達するまで、頸部を「前屈」ではなく後屈してもらう。なぜなら、頸部前屈状態で、胃管を鼻腔から挿入すると、鼻腔内上壁に胃管の先端が垂直にあたり、損傷や患者の苦痛につながるため。咽頭部より先は患者の頭部を前屈させると咽頭と食道が一直線になり、胃管の先端が食道内に入りやすくなる。
4.〇 正しい。胃管が咽頭に達したら嚥下を促す。なぜなら、嚥下を促すことで、管が食道へ進むのを助けるため。
5.× 「水」ではなく空気(10mL)を注入して、胃管の先端が胃内に到達したことを確認する。なぜなら、気管に入っていた場合、水を入れることで誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため。水の注入は禁忌である。胃の内容物が吸引することで、胃管の先端が胃まで到達していることを確実に判断できる。胃液は酸性であるため、pH試験紙を用いれば胃の内容物かどうかの鑑別も可能である。また、レントゲン撮影によって確認をする方法もある。

(※図引用:「illustAC様」)

感染予防策とは?

感染予防策は、院内感染の防止策として推奨されている方法である。感染の有・無にかかわらず患者と医療スタッフすべてに適応される予防対策である。患者の血液や体液、分泌、排泄されるすべての湿性物質、粘膜、創傷の皮膚は感染のおそれがあるとみなして対応・行動する方法である。

 

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