第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前46~50】

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46 自助具を図に示す。
 関節リウマチによって肩関節に痛みがある患者の関節への負担を軽減する自助具で適切なのはどれか。

1.万能カフ
2.長柄ブラシ
3.コップホルダー
4.ボタンエイド

解答

解説

関節保護の原則とは?

関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。

1.× 万能カフとは、フォークやスプーンに巻きつけて使う補助具で、握力の弱い方や手指の曲がらない(頚髄損傷:C5)に対し適応となる
2.〇 正しい。長柄ブラシは、関節リウマチによって肩関節に痛みがある患者の関節への負担を軽減する自助具である。長柄ブラシとは、長い柄がついているため、肩を動かさずに髪をとかしたり洗髪したりすることができる。したがって、リーチ制限を代償するための自助具である。
3.× コップホルダーとは、握力が弱くてもコップを持てるように工夫された自助具である。
4.× ボタンエイドは、把持能力が低下した関節リウマチ患者に適応である。手指の巧緻性の低下を補い、手・手関節の負担を軽減する。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

47 Aさん(47歳、男性、会社員)は、尿管結石による疝痛発作で入院した。入院翌日、自然に排石され、疼痛は消失したものの、結石が残存している。入院前は、ほぼ毎日、飲酒を伴う外食をしていた。
 Aさんへの退院指導で適切なのはどれか。

 1.「シュウ酸を多く含む食品を摂取しましょう」
 2.「1日2L程度の水分を摂取しましょう」
 3.「排石までは安静にしましょう」
 4.「飲酒量に制限はありません」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(47歳、男性、会社員)
尿管結石による疝痛発作。
・入院翌日:自然に排石、疼痛は消失、結石は残存。
・入院前:ほぼ毎日、飲酒を伴う外食。
尿路結石に対する日常生活指導を実施しよう。

 1.× シュウ酸を多く含む食品の摂取を「控える」。なぜなら、尿中に排泄されるシュウ酸は、カルシウム結石の最も重要な危険因子であるため。予防のためにはシュウ酸を多く含む食品の過剰摂取を控えることが大事である。ホウレンソウを筆頭に、キャベツ、ブロッコリー、タケノコなどにも含まれる。
 2.〇 正しい。「1日2L程度の水分を摂取しましょう」と退院指導する。なぜなら、水分をあまりとらない慢性的に脱水の状態では、尿が濃縮されて尿路結石ができやすくなるため。食事以外に1日2L以上の水分補給をし、1日尿量を2L以上とすることで、結石再発リスクを61%に減少できるという報告もある。
 3.× 排石までは安静する必要はない。なぜなら、運動をすると排石されやすくなるため。感染症を伴わない小さな結石(5mm以下)は、一般に治療は必要なく、しばしば自然に排出する。特に、縄跳び、ジョギングなど、からだを上下に動かす運動が効果的とされている。
 4.× 飲酒量を「制限する」。なぜなら、生活習慣(特に飲酒)が大きく関わっているとされているため。多量の継続的なアルコール摂取により血中乳酸濃度が増し、腎からの尿酸の排泄が抑制的に働く。高尿酸血症の状態となり、尿酸排泄を増加させ、カルシウム結石や尿酸結石の発生する危険性が増すといわれている。

尿路結石とは?

尿路結石症とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。 「動くと痛い」というのは結石の症状ではなく筋肉や骨からの症状のことが多いが、尿管結石の場合はじっとしていてももだえるほどの症状が出ることがある。 また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。

 

 

 

 

 

48 マンモグラフィを受ける成人女性への説明で適切なのはどれか。

 1.「仰臥位で行います」
 2.「検査前は絶食です」
 3.「造影剤を使います」
 4.「二方向から撮影します」

解答

解説

マンモグラフィとは?

マンモグラフィとは、乳房のX線撮影のことで、乳房撮影専用X線装置を用いて乳房を圧迫し、乳房内の組織の差を写し出す画像検査である。マンモグラフィでは、「しこり」や「石灰化」のように触れることの出来ない小さな病変を写し出すことが出来るため、早期乳がんや乳がん以外の病変を見つけ出すことに非常に有効である。

 1.× 「仰臥位」ではなく立位で行う。ちなみに、仰臥位で行うのは、乳房の超音波検査である。
 2.× 検査前は「絶食する必要はない」。ちなみに、絶食が必要なものとして、胃や大腸の内視鏡検査である。
 3.× 造影剤を「使用しない」。ちなみに、造影剤を使うのは、乳房のMRI検査である。
 4.〇 正しい。「二方向から撮影します」と説明する。乳房全体をくまなく写し出すために、片方の乳房に対して複数の方向(MLO:内外斜位方向とCC:頭尾方向)から圧迫し撮影を行う(※参考:「マンモグラフィとは」国立がん研究センター中央病院様HPより)

乳がんの検診について

乳がん検診(一次)は、国の指針によりますと、対象は40歳以上で、問診、乳房X線検査(マンモグラフィ)が基本になっています。視触診の推奨はされていませんが、実施する場合はマンモグラフィ検査と併用します。乳がん検診はマンモグラフィ検査が国際基準ですが、乳腺の密度が高い40代の検診精度が低くなるという課題があり、近年、マンモグラフィ検査に「超音波検査」を組み合わせたり、単独で用いたりする方法を採用しているところもあります。約7万6千人の40代の女性を、マンモグラフィ検査を受けたグループと、マンモグラフィ検査に超音波検査を加えたグループに無作為に分けて比較する大規模な臨床研究の結果、がんの発見率が、超音波検査を加えたグループの方が1.5倍高かったという報告があります。

(※一部抜粋:「乳がんの検診について」日本対がん協会HPより)

 

 

 

 

 

49 Aさん(86歳、女性)は、生まれ育った地域で、近所に住む友人と交流しながら1人で暮らしていた。買い物へ行く途中に転倒し、腰椎圧迫骨折で入院治療を受けた。退院後は他県に住む長女夫婦と同居している。暮らし始めて間もなく、Aさんは「私はここで暮らして、新しい友人ができるかしら」と長女に訴えるようになり、徐々に口数が少なくなった。
 このときのAさんの状況はどれか。

 1.閉じこもり
 2.廃用症候群
 3.セルフ・ネグレクト
 4.リロケーションダメージ

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(86歳、女性)
・1人暮らし:生まれ育った地域、友人と交流あり。
・買い物へ行く途中に転倒(腰椎圧迫骨折)。
・退院後:他県に住む長女夫婦と同居
・暮らし始めて間もなく、Aさんは「私はここで暮らして、新しい友人ができるかしら」と長女に訴える。
徐々に口数が少なくなった
→本症例は、腰椎圧迫骨折を契機に、生活環境に変化が生じた。新しい環境に変化した際に、不安の訴えや口数が減った。

 1.× 閉じこもりとは、寝たきりなどでないにもかかわらず、1日のほとんどを家の中で過ごし、日々の行動範囲が家の中か庭先ぐらいで、週に1回も外出しない状態である。
 2.× 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。
 3.× セルフ・ネグレクトとは、自己放任自己放棄などと訳され、なんらかの理由によって、生きていくために必要な衛生や健康、安全を維持するためのケアを怠り、損なってしまうこと、またはそこに至るまでの行為のことを指す。
 4.〇 正しい。リロケーションダメージは、Aさんの状況である。リロケーションダメージとは、環境の変化によって症状の悪化や混乱を招くことである。主に認知症患者や高齢患者に起こりやすい。

 

 

 

 

 

50 高齢者の歩行時につまずきが見られる場合、筋力低下が考えられる筋肉はどれか。

 1.大殿筋
 2.前脛骨筋
 3.下腿三頭筋
 4.大腿四頭筋

解答

解説
 1.× 大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制、【支配神経】下殿神経である。
 2.〇 正しい。前脛骨筋の筋力低下が考えられる。なぜなら、前脛骨筋は足関節背屈に働く筋肉であるため。つま先を地面から離し、つまづきを防止する筋肉である。前脛骨筋の【起始】脛骨外側面、下腿骨間膜、【停止】内側楔状骨と第1中足骨の底面、【作用】足関節背屈、内返し、【神経】深腓骨神経である。
 3.× 下腿三頭筋とは、下腿の強大な筋の総称で、膨隆する2頭をもつ浅側の腓腹筋と、深側にある平たいヒラメ筋とからなる。腓腹筋:【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経である。ヒラメ筋:【起始】腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経である。下腿三頭筋の筋力低下による歩行障害として、歩行の推進力の低下があげられる。
 4.× 大腿四頭筋とは、①大腿直筋、②外側広筋、③中間広筋、④内側広筋の4筋からなる大腿の筋の総称である。共同の腱は大腿前面の正中線を下行し、膝蓋骨の底と両側縁につき、これを介して(一部は膝蓋骨の前面を超えて)膝蓋靭帯となり、脛骨粗面につく。腱の両側の線維の一部は内側および外側膝蓋支帯となって膝蓋骨の両側を下行する。大腿四頭筋の筋力低下による歩行障害として、膝折れがあげられる。

 

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