第113回(R6) 看護師国家試験 解説【午前51~55】

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51 高齢者の医療の確保に関する法律の内容で正しいのはどれか。

 1.医療の給付は市町村が行う。
 2.高齢者は一律3割の医療費を自己負担する。
 3.40歳以上の被保険者と被扶養者にがん検診を行う。
 4.後期高齢者の医療給付の内容は国民健康保険と同じである。

解答

解説

高齢者の医療の確保に関する法律とは?

高齢者の医療の確保に関する法律とは、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成および保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もって国民保健の向上および高齢者の福祉の増進を図ることを目的とした法律である。

 1.× 医療の給付は、「市町村」ではなく運営主体(病院)が行う。
 2.× 高齢者の医療費を自己負担は、「一律3割」ではなく1~3割と収入に応じて異なる。65歳以上の方は1割または一定以上の所得のある場合は2割、特に所得の高い場合は3割となる。40歳から64歳までの方は1割となる。
 3.× 40歳以上(74歳未満)の被保険者と被扶養者に、「がん検診」ではなく特定健康診査を行う。特定健康診査とは、40~74歳までの医療保険加入者を対象に実施されるものである。特定健診で行う検査は、主に①身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、②血中脂質検査(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、③肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)、④血糖検査(空腹時血糖・HbA1c)、⑤尿検査(尿糖・尿蛋白)などである。ちなみに、がん検診とは、がんの症状がない人々において、存在が知られていないがんを見つけようとする医学的検査である。がん検診は健康な人々に対して行うもので、健康増進法で規定されている。
 4.〇 正しい。後期高齢者の医療給付の内容は国民健康保険と同じである。国民健康保険とは、日本の国民健康保険法等を根拠とする、法定強制保険の医療保険である。病気やケガで医療機関や薬局を受診する場合に、「国民健康保険証」を窓口に提示することで医療費の一定の割合を国民健康保険が負担できる。国民健康保険の加入者は、職場の健康保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合)の加入者、75歳以上等で後期高齢者医療制度の加入者および生活保護を受けている人以外の方となる。ちなみに、前期高齢者とは、65歳から74歳まで、後期高齢者とは、満75歳以上の高齢者をそれぞれ指す。

健康増進法とは?

健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。

【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。

【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。

 

 

 

 

 

52 高齢者のコミュニケーション障害の要因と状態の組合せで正しいのはどれか。

 1.歯牙の欠損:言葉が出てこない。
 2.耳垢の蓄積:音が小さく聞こえる。
 3.想起能力の低下:相手の表情が読み取れない。
 4.語音弁別能の低下:はっきり発音できない。

解答

解説
 1.× 言葉が出てこないのは、「歯牙の欠損」ではなく想起能力の低下である。歯牙(しが)とは、歯と顎骨を結ぶ骨である歯槽の中に埋まっている歯根のことで、歯の根っこの部分である。
 2.〇 正しい。音が小さく聞こえるのは、耳垢の蓄積である。耳垢が溜まってしまることを耳垢塞栓といい、耳の穴の中(外耳道)をふさいでしまう状態のことをいう。外耳道をふさがれてしまうと、音の聞こえが悪くなったり、耳に圧迫感が生じたり、耳鳴りが起こったりする場合がある。
 3.× 相手の表情が読み取れないのは、「想起能力の低下」ではなく視力の低下である。
 4.× はっきり発音できないのは、「語音弁別能の低下」ではなく歯牙の欠損である。音のゆがみによる語音弁別能の低下は、サ行→ハ行に、タ行→カ行に混同するなどである。「しんぶん」が「ひんぶん」に聞こえる。ちなみに、母音とは、口腔内で空気の流れが妨げられずに発せられる音のことである。一方、子音はそれ以外の、口腔内で空気の流れが妨げられて発せられる音である。唇や舌、歯などを用いて出す。つまり、日本語における母音は「ア・イ・ウ・エ・オ」の5音である。

老人性難聴とは?

老人性難聴とは、加齢によって耳(内耳)と脳(聴覚中枢)が障害されて聴こえにくくなっている状態である。老人性難聴は、高音域の聴力から障害される。他にも、語音弁別能や周波数選択性の低下、補充現象などの症状が複数現れる。ちなみに、補充現象とは、聞こえが悪いのに、音を大きくすると大きくした比率以上に大きく聞こえる現象である。

 

 

 

 

 

53 Aさん(92歳、女性)は重度の障害のため体を動かすことができないが、表情などで意思表示はできる。Aさんは食べることが好きで「最期まで口から食べたい」と言っていた。最近は誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しており、現在は入院中で終末期である。同居している家族は積極的な治療をしないことを希望し、自宅でAさんを看取ることを決めた。
 家族への退院時の指導で適切なのはどれか。

 1.「24時間付き添ってあげましょう」
 2.「オムツの重さで尿量を測定しましょう」
 3.「Aさんの息が苦しそうになったら救急車を呼びましょう」
 4.「Aさんが食べたいと望めば、口から食べさせてあげましょう」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(92歳、女性、重度の障害)
・体を動かすことができないが、表情などで意思表示はできる。
食べることが好きで「最期まで口から食べたい」と。
・最近:誤嚥性肺炎で入退院を繰り返す。
・現在:入院中で終末期
・同居している家族の希望:積極的な治療せず、自宅で看取ることを決めた。
→終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。患者が可能な限り前向きに生活できるような支援体制を提供するという。従来、医療・介護の現場では、終末期における治療の開始・中止・変更の問題は重要な課題のひとつである。疾病の根治を目的とせず延命のみを目的とした対症療法を一般的に延命治療と称し、人工呼吸・人工栄養(経管栄養)、人工透析などが含まれる。しかし、終末期患者では意思疎通の困難な場合も多く、患者の意思に反する治療(延命)になりかねない。治療・ケア内容に関する患者や家族の意思や希望を病状などに応じて繰り返し確認し、それを患者・家族・医療者で共有し、方針を見いだすことが非常に重要である。

 1.× 24時間付き添うより優先度が高いものがほかにある。なぜなら、同居している家族に負担がかかりすぎるため。家族の負担を考え、介護サービスの導入の検討することもある。
 2.× オムツの重さで尿量を測定するより優先度が高いものがほかにある。なぜなら、積極的な治療しない方針であるため。尿量を測定することは、術後の場合や食事が難しい場合、腎機能障害がみられる場合などに用いられる。
 3.× Aさんの息が苦しそうになったら救急車を呼ぶより優先度が高いものがほかにある。なぜなら、積極的な治療しない方針であるため。また、自宅で看取ることを決めているため、あえて救急車を呼ぶ優先度は低いといえる。
 4.〇 正しい。「Aさんが食べたいと望めば、口から食べさせてあげましょう」と家族への退院時の指導を行う。なぜなら、本症例は終末期で、食べることが好き最期まで口から食べたい」といっているため。終末期看護の役割は、患者の残された時間の生活の質(QOL)を高め、その人らしいまっとうできるように援助を行うことである。

 

 

 

 

 

54 Bowlby〈ボウルビィ〉が提唱したアタッチメントの記述で正しいのはどれか。

 1.人見知りは6、7か月の乳児に出現する。
 2.安全基地は家の中での子どもの居場所のことである。
 3.子どもと不特定の他者との間に築かれる情緒的な結びつきである。
 4.愛着対象との分離で生じる子どもの行動の第一段階は「絶望の段階」である。

解答

解説

MEMO

J. Bowlby(ジョン・ボウルビー)は、愛着理論である。乳幼児期(0~5歳)において療育者に受け入れられ十分な愛情を受ける経験をすることが、その後の人格形成に重要である、と提唱した。「子どもが不安な時に親や身近にいる信頼できる人にくっつき安心しようとする行動」のことである。

愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことである。ネグレクトによって反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)が起こる。反応性愛着障害とは、5歳までに発症し、小児の対人関係のパターンが持続的に異常を示すことが特徴であり、その異常は、情動障害を伴い、周囲の変化に反応したものである(例:恐れや過度の警戒、同年代の子どもとの対人交流の乏しさ、自分自身や他人への攻撃性、みじめさ、ある例では成長不全)。こどもの対人関係の障害である。

 1.〇 正しい。人見知りは6、7か月の乳児に出現する。J. Bowlbyの愛着理論において、愛着が形成されたかどうかは、6か月以降に始まる人見知り行動によって判断することができる。人見知りは、両親以外の人に興味がある一方で、未知の存在に対する恐怖心も生まれて、正反対の2つの感情を処理しきれず泣いてしまうのが原因と考えられている。
 2.× 安全基地は、「家の中での子どもの居場所」ではなく安心できる大人(両親)のことである。安全基地とは、子どもの不安をいつでも受けとめる、安心できる大人のことである。子どもの心のよりどころのことで、物理的な場所としての基地を作るのとは異なる。子どもが不安な時などに、体や気持ちを受けとめてもらえることで、安心感や信頼感が生まれる(※参考:「未来に向かう力を育む」大阪府様HPより)。 
 3.× 子どもと「不特定の」ではなく特定の他者(両親)との間に築かれる情緒的な結びつきである。愛着(アタッチメント)とは、主に乳幼児期の子どもと母親をはじめとする養育者との間で築かれる、心理的な結びつきのことである。
 4.× 愛着対象との分離で生じる子どもの行動の第一段階は、「絶望の段階」ではなく「抵抗の段階」である。第二段階は「絶望の段階」、第三段階は「脱愛着の段階」である。

J.Bowlbyの愛着理論

第1段階(生後3か月間):自分と他者(母親)との分化が不十分である。愛着はまだ形成されず、誰に対しても同じように泣いたり微笑したりする。

第2段階(生後6か月頃まで):母親に対して、特によく微笑し、より多く凝視する。

第3段階(2、3歳頃まで):母親を安全基地として、母親から一定の範囲内で、安心して行動したり探索したりする。母親からの距離は次第に遠くなる。

第4段階(3歳以上):身体的接触を必要としなくなり、母親の感情や動機を洞察し、協調性が形成されてゆく。

 

 

 

 

 

55 出生体重3,020gの正期産児。
 新生児期に最もチアノーゼを生じやすい先天性心疾患はどれか。

 1.動脈管開存症
 2.心室中隔欠損症
 3.心房中隔欠損症
 4.Fallot〈ファロー〉四徴症

解答

解説

非チアノーゼ性心疾患とは?

非チアノーゼ性疾患とは、心臓に穴があったり動脈と静脈の間によこ道があり、大量の血液が心臓と肺の間を空回りして心臓や肺に負担がかかるものである。 先天性心疾患の半分以上を占める。左心室から右心室へ血流が流れ込んでしまう。症状として、呼吸が速く苦しそうになり、発汗、ミルクがあまり飲めず、体重が増えないなどがみられる。

 1.× 動脈管開存症は、非チアノーゼ性心疾患である。動脈管開存症とは、胎児期に開存している大動脈と肺動脈間に存在する動脈管が出生後も自然閉鎖せず開存状態を維持した疾患である。つまり、出生後に動脈管が自然閉鎖しない病気である。大動脈から肺動脈への短絡が生じ、管が大きいと左心系の容量負荷になる。出生後は肺動脈圧が下がるため、胎児期とは逆に大動脈から肺動脈へ血液が流れるようになり、肺の血流が増加する。したがって、典型例では、ピークがⅡ音に一致した漸増・漸減型で、高調・低調両成分に富む荒々しい雑音(machinery murmur)が左第2肋間を中心に聴取される。治療が必要な症状として、動脈管が太く、たくさん血液が肺に流れて肺うっ血による心不全症状(哺乳不良、嘔吐、体重増加不良、頻脈、頻呼吸など)を引き起こした場合である。
 2.× 心室中隔欠損症は、非チアノーゼ性心疾患である。心室中隔欠損症とは、心室を隔てる壁に穴が開いているため血液の交通が生じる病気である。欠損を通る血液は左心室から右心室へ流れ、肺動脈に血液が多く流れることにより、肺うっ血や肺高血圧を引き起こす。多呼吸や陥没呼吸という呼吸器症状がみられ、哺乳不良や体重増加不良などの心不全症状が生じる。心室中隔欠損症の症状として、①肺動脈に血液が多く流れることにより、肺に血液がうっ滞する現象である「肺うっ血」や肺動脈の血圧が上昇する「肺高血圧」という状態を引き起こす。それにより呼吸が苦しくなり、多呼吸(呼吸数の増加)や陥没呼吸(肋骨の下が凹む呼吸様式)という呼吸器症状が初めに見られ、呼吸が苦しいことで哺乳不良や体重増加不良へとつながる。これらの症状を心不全症状と呼ぶ。
 3.× 心房中隔欠損症は、非チアノーゼ性心疾患である。心房中隔欠損症とは、左心房と右心房を仕切る心房中隔に欠損孔と呼ばれる穴が開いている疾患である。
 4.〇 正しい。Fallot〈ファロー〉四徴症は、新生児期に最もチアノーゼを生じやすい先天性心疾患である。ファロー四徴症とは、4つの特徴(「心室中隔欠損」、「肺動脈狭窄」、「大動脈騎乗」、「右室肥大」)がある病気である。大動脈が太く、通常より前方に移動していることで肺動脈が細く狭くなり、「肺動脈狭窄」になる。ファロー四徴症は、先天性心疾患であり、症状としてチアノーゼ、頻脈、多呼吸、哺乳不良などの症状がみられる。

(※図引用:「看護師 イラスト集【フリー素材】」看護roo!様HPより)

 

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