第106回(H29) 看護師国家試験 解説【午後71~75】

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71 生後1か月の男児。Hirschsprung<ヒルシュスプルング>病と診断され、生後6日、回腸部にストーマ造設術を行った。術後の経過は良好であり、退院に向けてストーマケアに関する指導を行うことになった。
 母親に対する指導として適切なのはどれか。

1.「面板をはがした部位はタオルで拭いてください」
2.「ストーマ装具の交換は授乳直後に行ってください」
3.「ストーマから水様の便が出る時は受診してください」
4.「ストーマ装具の交換は滅菌手袋を装着して行ってください」
5.「ストーマ装具は便を捨てる部分が体の外側に向くように貼ってください」

解答5

解説

本症例のポイント

・生後1か月の男児(ヒルシュスプルング病)。
・生後6日:回腸部にストーマ造設術を行った。
・術後の経過は良好。
・退院に向けてストーマケアに関する指導を行う。
→ヒルシュスプルング病とは、消化管の蠕動の役割を果たすために必要な神経細胞が、肛門から連続して欠如するために、その範囲の消化管の運動がおこらず、腸閉塞をきたす病気である。男女比では3:1で男児(男性)に多い。症状として、便秘、嘔吐、腹部膨満などを呈する。治療は手術が選択され、神経細胞がない腸を切除して、神経細胞の存在する腸を肛門のぎりぎりにつなぐ。

1.× 面板(フランジ)をはがした部位は、「タオル」ではなく石けんや洗浄剤、もしくは微温湯を用いてゆっくり皮膚洗浄を行う。なぜなら、面板(フランジ)をはがした部位は、不清潔領域であるため。タオルで拭くだけでは不十分である。
2.× ストーマ装具の交換は、「授乳直後」ではなく通常空腹時もしくは授乳前に行う。なぜなら、授乳直後は消化にあたって、腸管が活発に活動し、ストーマからの内容物の漏出が多くなるため。
3.× ストーマから水様の便が出ることは異常ではない。なぜなら、本症例は、ストーマの造設部位が回腸部であるため。回腸部は、もともと水様の便が出る。ちなみに、食物の消化の度合いは、腸管の位置によって異なり、小腸付近であればあるほど水様となり、大腸で徐々に固形になっていく。
4.× ストーマ装具の交換は、滅菌手袋を装着して行う必要はない。なぜなら、ストーマ装具の内部は便に露出しており、もともと不潔環境であるため。滅菌手袋は、外科的処置や中心静脈カテーテルの挿入など無菌操作を行う。
5.〇 正しい。「ストーマ装具は便を捨てる部分が体の外側に向くように貼ってください」と指導する。なぜなら、便を捨てる部分(ストーマ装具の排出口)は、ストーマのパウチの中にたまった便を排出するため。内側に貼っておくと、体を汚しかねない。

 

 

 

 

 

72 放射線療法に関わる看護師の健康管理に必要なのはどれか。(※解答3つ)

1.線量計を装着する。
2.ヨウ素剤を服用する。
3.ゴーグルを着用する。
4.N95マスクを着用する。
5.鉛を含んだエプロンを着用する。

解答1/3/5
理由:設問が不適切で複数の選択肢が正解と考えられるため

解説

放射線療法とは?

放射線療法とは、放射線を患部に体外および体内から照射する治療法である。治療中からおこる可能性がある症状は、気分不快、食欲不振、下痢、倦怠感、頻尿、排尿時痛、白血球減少、貧血、照射した部分の肌荒れなどがある。数か月以降に起こる可能性があるものとして放射線腸炎、過敏性腸症候群、直腸出血、放射線膀胱炎、膀胱出血などがある。

1.〇 正しい。線量計を装着する。医療法の施行規則で、放射線医療業務の従事者は被曝線量をモニタリングすることが義務づけられており、男性は胸部、女性は腹部に個人線量計などを装着しなければならない。放射線業務従事者の健康管理のために被爆の限度量が定められている。ちなみに、線量計とは、個人線量計、ドシメーターなどともいい、それを身につけた個人の一定期間の被曝量(個人線量)を記録する計測器である。
2.× ヨウ素剤を服用することは効果がない。なぜなら、甲状腺の被ばくが50ミリシーベルトを超えると予測されたときに適応となるため。ちなみに、ヨウ素剤とは、原子力災害時に放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくの予防又は低減 をすることを目的として承認されている医療用医薬品である。
3.〇 正しい。ゴーグルを着用する。なぜなら、レンズの放射線遮へい効果は50%程度あり、適切な利用は水晶体の被ばく低減に効果的であるため。
4.× N95マスクを着用する必要はない。なぜなら、N95マスクは、空気感染から守る防護具であるため。N95マスクとは、アメリカ合衆国労働安全衛生研究所のN95規格をクリアし、認可された微粒子用マスクのこと。N95マスクの役割は空気感染源を捕集し、着用者の呼吸器感染のリスクを低減することである。
5.〇 正しい。鉛を含んだエプロンを着用する。血管撮影にかかわる看護師は、鉛を含むエプロンの着用を必要とすることがある。防護エプロンとは、X線のエネルギー(管電圧kV設定)とエプロンの鉛当量に応じて、受ける線量を90%以上(85%~99%)減らすことができる。

 

 

 

 

 

73 ホメオスタシスに関与するのはどれか。2つ選べ。

1.味蕾
2.筋紡錘
3.痛覚受容器
4.浸透圧受容器
5.中枢化学受容体

解答4/5

解説

ホメオスタシスとは?

ホメオスタシスとは、外界がたえず変化していたとしても、体内の状態(体温・血液量・血液成分など)を一定に維持できる能力のことある。 例えば、体温が下がると鳥肌になり体温の低下を防いだり、体を震えさせて強制的に運動を起こして体温を上げるなどをさす。

1.× 味蕾は、ホメオスタシスには関係しない。なぜなら、味曹は舌の表面にある味覚の受容器であるため。味蕾とは、味細胞の集まりで、味蕾の数は乳幼児で約1万個、成人になるにつれて約7500個まで減少するといわれている。味蕾にある30~70個ある味細胞が味を識別する。味覚の伝導路は、味蕾(味細胞)→顔面神経(舌前2/3)、舌咽神経(舌後1/3)→延髄孤束核→視床→大脳味覚野となる。
2.× 筋紡錘は、ホメオスタシスには関係しない。なぜなら、筋紡錘は筋の張力を感知する器官であるため。筋紡錘とは、骨格筋の収縮を感知する感覚器(筋の長さとそれが変化する速さを感知する感覚器)であり、腱をたたいて骨格筋を急速に伸ばすと起こる筋単収縮(伸張反射)に関与する。
3.× 痛覚受容器は、ホメオスタシスには関係しない。なぜなら、侵害刺激が痛覚受容器で痛みとして感知され、身体を損傷から守る警告信号(屈曲反射など)として役立っているため。
4.〇 正しい。浸透圧受容器は、ホメオスタシスには関係する。浸透圧受容器とは、視床下部にある血液の浸透圧を調整する受容器である。脱水などにより血漿浸透圧が上昇すると、バソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌を調節して尿量を変化させ、体内の水分量を一定に保ち血圧をほぼ一定にすること(血漿浸透圧の恒常)でホメオスタシスを保っている。
5.〇 正しい。中枢化学受容体は、ホメオスタシスには関係する。中枢化学受容体とは、延髄に位置し、血液中の二酸化炭素濃度の上昇(pH低下)を感知すると、呼吸中枢を刺激して横隔膜などの呼吸筋を動かす役割を持つ。これにより呼吸数を調節し、全身へ酸素を安定的に供給している。血液ガスを正常範囲に維持する目的があることから、ホメオスタシスを保っている。

頭痛の発生機序

痛みは、①侵害受容性疼痛、②神経因性疼痛、③心因性疼痛の三つに分けられる。
①侵害受容性疼痛は、侵害刺激、すなわち組織を傷害する刺激あるいは組織を傷害する可能性をもった刺激による痛みである。侵害刺激が加わると局所に分布する細い神経線維の自由終末が反応する。この終末部は刺激の観点から侵害受容器、もたらされる感覚の観点から痛覚受容器と呼ばれる。
②神経因性疼痛は、神経系に病変があって生じる痛みで、三叉神経痛、後頭神経痛などが含まれる。
③心因性疾痛は、侵害刺激や神経系の病変がないのに現われる痛みである。頭痛もこれら3種類の痛みに分けられる。

(※引用:「頭痛の発生機序」著:横田 敏勝より)

 

 

 

 

 

 

74 眼球内での光の通路に関与するのはどれか。2つ選べ。

1.強膜
2.脈絡膜
3.毛様体
4.硝子体
5.水晶体

解答4/5

解説

(引用:MSDマニュアル家庭版「結膜と強膜の病気の概要」)

1.× 強膜とは、眼球の外側をつくるいわゆる「しろ目」である。乳白色の強くて囲い膜で、前方は角膜とつながっている。つまり、角膜以外の眼球を覆う最も外側の膜である。
2.× 脈絡膜とは、強膜(白目の部分)の内側にある膜である。酸素や栄養の供給と瞳孔以外からの光を遮る働きがある。眼球の硬い壁である強膜と網膜の間にある組織。
3.× 毛様体とは、虹彩から続く組織で、血管と筋肉が豊富にある組織である。虹彩と脈絡膜の間にあり、毛様体小帯という細い線維が伸びて水晶体を支持している。内部には毛様体筋があり、水晶体の厚さを変えることで、ピント調節を行う。
4.〇 正しい。硝子体は、眼球内での光の通路に関与する。ものを見るとき光は、①角膜→②前房→③房水→④瞳孔→⑤水晶体⑥硝子体→⑦網膜→⑧視神経→⑨視交叉→⑩視索→⑪外側膝状体→⑪視放線→⑫後頭葉視覚領域へと伝わる。硝子体とは、眼球内の大部分を占める透明なゼリー状の組織で、眼球の形態を保ち、角膜や水晶体で屈折された光を網膜まで透過させる働きがある。
5.× 水晶体は、眼球内での光の通路に関与する。ものを見るとき光は、①角膜→②前房→③房水→④瞳孔→⑤水晶体⑥硝子体→⑦網膜→⑧視神経→⑨視交叉→⑩視索→⑪外側膝状体→⑪視放線→⑫後頭葉視覚領域へと伝わる。水晶体とは、凸レンズの形をしており、外から入ってくる光を屈折させることで、網膜にピントの合った像を映すという役割をもつ。

 

 

 

 

 

75 排便時の努責で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.直腸平滑筋は弛緩する。
2.呼息位で呼吸が止まる。
3.外肛門括約筋は収縮する。
4.内肛門括約筋は弛緩する。
5.腹腔内圧は安静時より低下する。

解答2/4

解説

1.× 直腸平滑筋は、「弛緩」ではなく収縮する。直腸平滑筋収縮は、副交感神経の作用で促進される。これにより、排便が促される。ちなみに、直腸平滑筋とは、内肛門括約筋は腸の筋肉の一部で、平滑筋という自律神経がコントロールする筋肉である。
2.△ 呼息位で呼吸が止まる。呼息位とは、排便時に腹圧をかけるために力む際、息を吸ったとき(吸息位)、吐き出すとき(呼息位)である。呼息位は、吐き出すときであるため、息が止めとは限らない。ちなみに、息が止まるのは、努責時(排便時や出産時などで力むこと)である。※もっと詳しく分かる方いたらコメント欄で教えてください。
3.× 外肛門括約筋は、「収縮」ではなく弛緩する。外肛門括約筋とは、内肛門括約筋を外側から筒状に取り囲むように存在する随意筋かつ横紋筋である。体性神経である下直腸神経・会陰神経の支配を受けている。外肛門括約筋の弛緩が起こって排便が起こる(排便反射)。つまり、お尻の穴の排便の時に働く筋肉である。
4.〇 正しい。内肛門括約筋は弛緩する。内肛門括約筋とは、骨盤内臓神経(副交感神経支配)で、直腸内圧の上昇によって反射が起き、内肛門括約筋は無意識に弛緩する。
5.× 腹腔内圧は、安静時より「低下」ではなく上昇する。腹腔内圧とは、お腹の中の空気圧(腹腔内部にかかる圧力)を指す。

排便の仕組み

①内肛門括約筋は、平滑筋、外肛門括約筋は随意筋よりなる。

②便が肛門の近くまでくると内肛門括約筋が弛緩するが、便が漏れないように随意的に外肛門括約筋を収縮させる。

③腹圧をかけることにより中枢から陰部神経に指令が伝わり、随意筋の外肛門括約筋が弛緩し排便に至る。

 

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